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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第16章『終焉の茶会、三十通りの挑戦状』

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04.扉の向こうに姉がいる

淡く光る出口の光を前に、二人の少年が歩みを進めていた。


「……あ、あそこだね。出口」


カノンが指さす先に、帰還の扉が見える。


「みたいなのだ」


隣を歩く帝が、いつもの調子で応じた。


試練はすでに終えていた。

二人とも魔石を手にしており、もうあとは帰るだけだった。


「姉さん、待ってるかなあ?」


カノンがぽつりと呟く。


「きっと待ってるのだ……」


帝は短く頷いた。

けれどその顔はどこか複雑で、視線を宙にさまよわせていた。


「君のことも、急いで姉さんに見てもらわないとね!」


そう言いながら、カノンは腕の中の何かを覗き込む。

大事そうに抱えているのは──


「…………神亀……なぜこの空間に……??」


帝がぼそりと呟いた。


(お姉ちゃんになんて言うべきか……。いや、苦労するのはお姉ちゃんだからいいのだ。俺には関係ないのだ!!)


現実から目を背けるように、帝は胸の中で叫ぶ。


「ほら、帝! 行くよ!」


カノンが手を差し出す。


「ふん。はぐれないように手を握ってやるのだ」


帝はそう言いながらも、その手をしっかりと握った。


二人は肩を並べて、扉の向こうへと歩き出す──。



---


その夜。

学園の職員室には、交代制で残る教員たちが集まっていた。


夜の当番は、月、夜行、セレナ、橘、グレンの五人。

扉の向こうから戻ってきた生徒は、今のところまだ一人きり。


「……カノン……帝??」


ふと、月が小さく呟いた。


「月先生??」


橘が振り返るが、月は答えず立ち上がる。


なんとなく、胸騒ぎがした。

気配を感じて、夜の校庭へと足を向ける。


風が揺れた。

魔力石の空間への扉が、静かに開いた。


「あ、姉さんだ!!」


「お姉ちゃんなのだ!!」


飛び出してきた二人の声が、夜空に響く。

そのまま駆け寄って、月の胸に飛び込んだ。


「……………おかえりなさい…二人とも」


月は静かに二人を抱きしめ、その頭を優しく撫でる。


「ぐず…………」


背後で、橘が涙をこらえるように鼻をすする。

それに気づいたグレンが、そっとハンカチを差し出した。


月が撫でていた手を止めたのは、その時だった。


──モゾモゾ。


二人の間で、何かが蠢いた。


「???????」


「………………」


「……あ、そうだ。この子、苦しそうだったから連れてきた! 姉さん、どうにかして!」


カノンが腕の中から差し出したのは──神亀だった。


「……………………………………ゴフッ」


月がその場に崩れ落ちる。口元から血が滴る。


「大丈夫か?! 月!!」


夜行がすぐさま駆け寄り、支える。


「あらあらあら〜」


セレナが微笑みながらも心配そうに覗き込む。


「え?! 何が!!」


橘が慌てて声を上げ、グレンは横でオロオロしていた。


「なぜ………神亀が………ぐふっ」


月が震える手で、神亀を指す。


「いたから連れて帰ってきた」


カノンがきょとんと答える。


「帝!!」


「試練会場は別々だったのだ。だから……俺は知らないのだ」


「もう、早くなんとかして!」


カノンが不満そうに声を上げる。


(帝の明日の朝ごはんは苦手なグリンピースごはんにしてやる! カノンは夏休みの宿題倍にしてやる!!)


月は涙目で、しかし確かにそう心に誓った。

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