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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第16章『終焉の茶会、三十通りの挑戦状』

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02.ただ打ち続ける、ただ撃ち続ける

──静寂。


魔力石の空間に放り込まれてから、いったいどれほどの時が経ったのだろう。

男子生徒は、静かに碁盤の前に座っていた。


目の前には、四面に展開された碁盤。

その全てを相手に、彼はひたすら打ち続けている。


「………………」


額に浮かぶ汗。震える指先。

右手に持った黒石が、かすかに震えていた。


(なぜ………ど素人の俺が?)


内心の問いは、誰にも届かない。

囲碁──それは祖父の暇つぶしに付き合うため、仕方なく覚えた遊びだった。

趣味でもなければ、勝ちたくてやっていたわけでもない。


けれど今──


パチン、と碁石を置く音が、静寂の空間に響く。


ひとつ、またひとつ。

打てば打つほど、盤面は混沌とし、己の神経は摩耗していく。


(集中しろ……集中しろ………)


口には出さず、何度も何度も唱える。

特にルール説明があったわけでもない。

気づいたらこの場にいて、気づいたら打たされていた。


対面する相手たちは、まるで“生きているかのような石使い”ばかりだ。

勝てる気がしない。


(この試練……どんな意味が??)


打っても打っても、終わりは見えない。

罠のような一手、焦らされる布石、容赦ない挟み撃ち。


何面も相手にするなど、祖父すらやったことはなかった。

それでも──


パチン。


パチン。


パチン。


ただ、打ち続ける。


ただ、打ち続けるしかない。



---


同じ頃、別の空間では──


「うおおおおおおおおおおおお!!!」


怒声とともに、爆炎が魔物を包んだ。


その生徒は、両腕から放たれる炎に、ありったけの魔力を込めていた。


目の前には巨大な魔物。

その口元が、ゆっくりと開く。


「この石が欲しければ、力を示せ」


それが、この試練の最初に放たれた言葉だった。


ならばと、生徒は迷わず全力をぶつけた。

渾身の火球。魔力を限界まで集中させた爆炎魔法。


──だが、


「まだまだだ。もっと力をぶつけろ」


魔物は微動だにせず、同じ言葉を繰り返す。


(こんなん……魔力切れ起こして倒れるわ!!)


だが、止めることはできない。

全力でなければ、石は手に入らない。


「くっそおおおおおおお!!!」


再び炎が唸りを上げて魔物に襲いかかる。

だが、返ってくる言葉は──


「もっと力をぶつけろ」


「なんなんだよ!!」


叫びが虚空に響く。

魔力の奔流と、果てしない強制試練。

ここから脱するには、ただ──


撃ち続けるしかなかった。

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