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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第16章『終焉の茶会、三十通りの挑戦状』

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01.魔石を手に、肉を背に

校庭に設置された、魔力石の空間への扉が開いた。

それは音もなく静かに動き、生徒たちを送り出した空間へ、今度は帰還を迎え入れる道となる。


教員たちは足早に扉の前へ集まり、息を呑んでその開口を見守っていた。


やがて、扉の向こうから──


どすん、と地を踏み鳴らすような音と共に、生徒が一人、姿を現した。


「……………………えっと……だれ?」


最初に声を発したのは、誰ともつかぬ教員だった。

その言葉に、目の前の生徒が肩を怒らせて叫ぶ。


「ひどい!! こんな可愛い生徒の姿を忘れるなんて!!」


その声に、反応を示した教員が一人。


「…………………その声! コハルか!!」


「あたしだって好きでこんな姿になったんじゃないんです〜」


目の前にいるのは、紛れもなくコハルだった。

だが、以前の姿とは明らかに違っていた。

丸くなった頬、揺れる腹部、地を震わせる足取り──誰もが目を見開く。


「そうですよ〜」


「え?? 待って。三日前まではシュッとしてスラッとして……」


月が困惑気味に言う。

その隣で、カグラも口を開いた。


「一体中で何があったの?!」


言葉を失ったように無言のまま見つめるグレン。


「………………………」


「……あ〜………固まってる」


ヒサメが呆れたように口を挟む。


コハルは、肩を落として深く息を吐いた。


「あたしだって好きでこんな姿になったんじゃないんです〜」


「そ………そうですよね! そうですよね!」


月は慌てて言葉を返すが、言い淀む。


「あの…なんで………その………こう………ポッチャリというか……ふっくらとしたというか……」


「そこはもうデブったって素直に言ったほうがいいぞ?」


ヒサメが真顔で突っ込んだ、その直後だった。


「ふん!!!」


鈍い音が響く。

ヒサメが吹き飛ばされた。


「ヒサメせんせーーーー!!!」


周囲から悲鳴が上がる。腐っても鬼の妖怪。拳にはそれなりの威力がある。


コハルは、胸を張って叫んだ。


「仕方ないじゃん!! あたしの試練フードファイトだったんだよ!! なぜか!!」


「ギャル曽我とかジャイアント黒田に勝てるわけ無いじゃん!!! ありえない!!」


顔を真っ赤にして、両手を振り回す。

その姿に、誰もが呆然としつつも──


「………でも……勝ったんだ……」


一人がぽつりと漏らす。


「鬼の妖怪の本気出してやったわ」


「いや、鬼関係あるかな?」


鬼影がぼそっと突っ込みを入れる。


「ま、取ってきたってことで……ね」


そう言って、コハルは得意げに魔力石を掲げた。

その手には、確かに淡く光る石が握られている。


月は少し間を置いて、柔らかく言った。


「…………色々衝撃を隠せませんが………。あなたが一番乗りですよ!」


「いえーーーい!!」


大きくジャンプしたその瞬間、

地面が鈍く唸りを上げ、足元にひびが走る。


「………魔力石はコチラで回収しますね。まとめて鍛冶師に依頼するので……」


「はーい」


コハルがあっさりと差し出した魔力石を受け取りながら、月は表情を引き締める。


「とりあえず………………ダイエットしましょうね」


「えーーーー疲れて帰ってきたのに?!」


肩を落とすコハルに、月が問う。


「シルフ先生……保護者はなんと?」


「あー……元の体型に戻るまで家、出禁って」


風にゆれる緑の精霊が、申し訳なさそうに答える。


「くっそ鬼ババア!!!」


叫びが校庭に響き渡る中、教員たちは言葉もなく、ただ生還を喜んでいた。

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