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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第15章『終焉の茶会、双つの魂と試練の扉』

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10.その扉が開くとき

学園内は、静けさに包まれていた。


試練の扉が開かれてから、今日で三日目。


校庭に設置された魔力石空間──そこに生徒たちは一人ずつ入っていった。

誰一人、まだ戻ってこない。


「毎日祈ってますけど………。なかなか戻ってきませんね……」


静かに呟いたのは、数学担当の橘 葵。

メガネの奥の目元が、少しだけ曇っている。


「今年の生徒はのんびりさんが多いにゃ」


そう言って尻尾を揺らすのは、猫獣人のミミ。

明るく言ってはいるが、耳はぴくぴくと落ち着かない。


「……あら、でも締め切りまであと四日よ?」


九尾のカグラがそう言って笑うと、光の大精霊セレナがふわりと現れた。


「…………悠久の時を生きる私ですが………。この授業だけは……不思議と、とても長く感じてしまいます」


皆、表情には出さないが、同じ思いなのだろう。


そこへ、昼食を持った月が現れた。


「お疲れさまです〜。今日はオムライス作ってみました〜」


「聖女ちゃんの手料理、最高だね」


鬼影が笑いながら箸を伸ばす。


「はいはい。褒めても何も出ませんよ」


軽くあしらいながらも、月の動きは止まらない。

食事を並べ、飲み物を補充し、教師たちに自然と声をかけていく。


帝もカノンも、今なお試練の中にいる。

それでも──


(信じてますから。あの子たちのこと)


月は今日も笑顔だった。


エルフの教師の一人が、ぽつりと呟く。


「………毎年………この三年間、同じ想いを……?」


教師たちは、静かにうなずいた。


「俺、この授業?? 初めてだけどさ。凄く考えるよな〜」


鬼影が口を開くと、月はオムライスを盛りながら答える。


「魔力石なんて普通は勝手に取りに行きなさい、ですからね。


授業の一環として……しかも命の危険を知った上で行かせるなんて………ありえませんからね」


その言葉に、鬼影もエルフたちも言葉を失った。


「それに、魔力の使い方なんて……わざわざ学校で習うことではないですからね……。


皆、適当に師匠を選んで教えてもらう。それが当たり前ですから」


月の声は、柔らかく、しかし静かに響いた。


「魔力に呑まれて亡くなる子もいる世界です。少しでも……私たち大人が導かなければ……」


エルフの教師は、静かに目を伏せた。


(我々は………共存すると言いながらも、心のどこかで他種族を見下していたのだろう……)


そのとき──


「…………………あ…………」


月が立ち止まり、顔を上げた。


「どうした?」


夜行が静かに問いかける。


「扉が……開きます」


その声に、教師たちは一斉に立ち上がった。

校庭へと向かう足音が、静寂を破る。


試練の扉は、今まさに──


ゆっくりと、音もなく開こうとしていた。

次章

第16章『終焉の茶会、三十通りの挑戦状』は、

10月10日 20時より投稿を開始します。


どうぞ、お楽しみに。

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