09.お姉ちゃんなら、なんとかする
「とまあ……僕のやったことはこんな感じ」
カノンが言い終えるのと同時に、帝は大きくため息をついた。
「……………まあ、何もなかったならいいのだ」
「??? 何もなかったって言っても……僕、ブスだのなんだの言っちゃったし……」
「聞きたくなかったのだ……」
帝は眉をひくつかせながら、そっぽを向く。
(この空間は神の干渉はできないはず……いや、でも万が一ってことが…………………………………。)
「ま、でもお前はラッキーだから大丈夫そうなのだ」
「???? 僕、運はいいよ???」
悪びれる様子もなく、カノンは胸を張る。
帝はこめかみを押さえながら、やれやれと首を振った。
「帝の試練は?? なんだったの?」
「………………森を歩いてるだけだったのだ」
「ふ~ん。……本当に人それぞれなんだね〜……」
カノンはそう言って、また草の上に寝転んだ。
「クラスの皆はどんな事してるんだろうね」
「それはわからないのだ………。戻ってきたら皆で教え合うのだ」
「じゃあ、早く戻ろうか!」
「何人かもう戻ってきてるかもしれないのだ!」
二人は顔を見合わせ、うなずき合うと、並んで出口に向かって歩き出した。
しばらく歩いたころ──
帝はふと、カノンの腹のあたりでモゾモゾと動くなにかに気づく。
「お前……お腹に何入れてるのだ」
「あ、忘れてた。島から降りるときにね、なんか苦しんでたから拾ってきた。
姉さんならなんとか出来るかな?って思って」
「…………は?」
カノンが取り出したのは──
一匹の、苦しそうな亀だった。
「………………ふーーーーーーーー」
帝は天を仰ぐ。
「カノン…………」
「うん」
「そいつは神亀。……聖獣なのだ」
「しんき??? せいじゅう………??」
「セレナ先生の授業で言ってたのだ!!」
「……………ふーん。でも苦しそうだから」
帝はもう一度、深く息をついた。
「………………まあ、お姉ちゃんならなんとかすると思うのだ」
帝は、笑顔で血を吐く月の姿を、ありありと思い浮かべる。
(ま、お姉ちゃんだからいいのだ)
──そのころ、学園の職員室。
「!?!! なんか嫌な予感がします!!」




