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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第15章『終焉の茶会、双つの魂と試練の扉』

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08.家族を悪く言うやつは、たとえ神でも

「んとね、僕は透明な階段に登って、空の上にある島に行ったんだ」


そう言いながら、カノンは草の上にごろりと転がった。

まるでお昼寝でも始めそうな勢いだったが、言っている内容はまるで夢のようだった。


「その透明な階段ね、魔力の流れが不均一な部分もあって、間違えて踏んだらそのまま真っ逆さま仕様だったんだよ」


「…………………」


「ま、僕の前ではそんなの無意味なんだけどねー」


(相変わらずすごいのだ)

「ウザいのだ」


「心と声が逆だよ」


「…………間違え…………てないのだ」


「ないのか……」


カノンは少しだけ肩をすくめてから、また話を続ける。


「でね、島に着いたら、なんかキレイめな人??がたくさんいてさ」


「…………………………」


「でも、すっごく感じ悪くて。帝のことを“不出来な存在”って言ってたよ。

そんな帝と一緒にいたら、僕の価値が下がる〜〜〜、とか」


帝の心臓が、きゅっと縮む。


(なぜこの空間に神がいるのだ……!? そんなはず……ありえないのだ……)


帝が青ざめている横で、カノンはさらっと続ける。


「で、なんかごちゃごちゃ言ってきたからさ。僕、思わずこう答えたんだ」


(カノン! それ以上言ったら──神の問答で不況を買ったら──!)


「うるせえブス。お前そんなんだから一生片思いなんだよ。


僕が誰といようが勝手だろ。てめぇみたいなブスなんかに指図される覚えはねぇ!」


「………………は?」


帝の口が、あんぐりと開く。


「帝のこと“不出来”っていうけどさ。お前性格が不出来だからフラれてんじゃん。


ダッセーの。性格ブスって本当に可哀想。って言ったら、なんかその人、消えた。


でね、目の前に僕の石が落ちてて──その隣にもう一個。…………なんとなく分かったんだよね。これ、帝の分だって」


「な、なんでお前の前にあるのだ!?!?!?」


「知らないよ? この空間が“こっちの方がいい”って判断しただけじゃないの?」


帝はしばらく目を見開いていたが──ついに、叫ぶ。


「おま……おま……お前!! お前がブスブス言ってたのは、恐らく神なのだ!! カノン!!


神は寛容ではないのだ! 無慈悲で、残虐で、執念深くて………」


「……………だから??」


「だから、じゃないのだ!!!」


「僕の家族を悪く言うやつは、たとえ神でも許さない」


その言葉は、あまりに静かで、あまりに真っ直ぐだった。


ふざけた口調でもなければ、いつもの飄々とした調子でもない。

ただ、そこにあったのは──本気の“怒り”と“信念”。


まっすぐに帝を見つめるその瞳に、冗談の色は一切なかった。


帝は、視線をそらせなかった。

そして──気づいた。


(ああ……これが、オレの試練だったのか……)


だから、石は自分のもとではなく、カノンのもとに現れたのだ。

あの透明な階段も、この空間も、そして“神”でさえも──


帝がどこまで“信じられるか”を、試していたのだ。


「ふ……ふふっ……ふははははははっ……!」


帝は天を仰ぎ、声を上げて笑った。


──カノンという、無意識の光を。

それを“信じきれるかどうか”。


帝にとってカノンは、ただのウザい双子などではなかった。

もう、いなくてはならない存在なのだと──


今、改めて知った。

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