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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第15章『終焉の茶会、双つの魂と試練の扉』

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04.運と才能と、無自覚

「ん~~~~……高いなあ……」


森の奥で空を見上げるカノンが、ぽつりと声を漏らす。


遥か彼方──雲の切れ間に、浮かぶ島のような“何か”が見えた。

その輪郭はぼんやりとしていたが、魂の奥が確かに反応していた。


「あの高さまで、魔力切らさずに登り切る自信ないなぁ……」


飛行魔術には自信がないわけじゃない。

でも、あそこまで持続して魔力を維持するのは、想像以上に大変そうだ。


カノンはしばし空を見つめていたが──ふと、視界の端に光が差し込んだ。


「……ん? なにあれ?」


一筋の光。よく見ると、それは空へと伸びる“階段”だった。

けれど、それは透明で、ほとんど見えない。


よほどの集中力で魔力を練らなければ、気づくことすら困難なほど。


「……あの階段を登れってことね。僕の運じゃなきゃ見落としてたかも」


カノンは軽く首を傾げ、透明な階段の起点へと歩いていく。


「はあ〜〜……これほんとに見えないな。目に魔力を凝らして、よーく……っと」


瞳が淡く光る。

視界が魔力に敏感になったことで、ようやく足元に“踏み場”が浮かび上がった。


「でもま、僕のコントロール力なら余裕だね!」


そう言って、すっと息を吸い──そして、第一歩を踏み出す。


空に浮かぶ、魔力の階段。

だが、それは不安定な構造で、場所によっては魔力の層が薄く、崩れやすい。


(あ………場所によっては層が脆いね。間違えた段に乗ったら……真っ逆さま。ふ~ん)


カノンは楽しげに、それでも慎重に、階段を一段ずつ登っていく。

その足取りには、迷いも、躊躇いもなかった。


雲を抜け、光の中へ──


やがて視界が開け、空に浮かぶ“浮遊島”がその姿を現した。


澄み切った空気。微かに揺らめく大地。

島の中央には、不思議な光が漂っている。

魂の核を刺激するような、不思議な気配があった。


「……ここかあ。僕の、試練の場所」


カノンは立ち止まり、笑った。





──その頃。カノンの体内では。


「うんうん。すごいね〜すごいね〜〜〜〜!」


魂の奥深く。

“暴食の魔王の核”が、ひとりで感心しながら喋っていた。


「お願い……誰か気づいて……。暴食の魔王、ちゃんと覚醒してるのに……」


「ほんとはね、こういうときって、他の魔王が確認しに来るの。暴走してるかどうかって。


でも……誰も来ないんだけど!? ねぇ、なんで!?」


「ていうか、この子、なんで暴走しないの? え? して? してよ?」


「しかもコントロール力エグいし……なにこの子……天才……?」


小さな核が、カノンの魔力制御に感嘆しつつも、誰にも気づかれないことに孤独と困惑を深めていた。


──そして、カノンは空島の中心へと向かう。

無自覚のまま、誰よりも才能を宿しながら。

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