03.この試練、無理じゃね?
──静寂だった森が、静かに息づき始める。
生徒たちは、それぞれの“魂に導かれる道”をたどって歩き出した。
「え………。そっちなの??」
途中まで一緒に歩いていた二人組の生徒の一人が、突然進路を変えた相手を見て呆然と立ち尽くす。
「いや、いやいやいや! 分かれ道あったっけ!? そっち崖だよ!?」
「……分かっちゃったんだ。行ってくる!」
「うそでしょ!? どんだけ感覚鋭いの!?」
その“崖”の上では、別の生徒が両手両足を必死に使って岩を登っていた。
「は、はあああっ……! 落ちたら……死ぬ!! 普通に死ぬ!!」
足元を見てしまい、さらに恐怖が増す。
「無理無理無理!! 命綱とか無いの!?」
それでも、彼の手は止まらなかった。
一方で──森の奥、一面に広がる巨大な花畑。
「………………え?」
小柄な少女が、そこに立ち尽くしていた。
「うわ~~~ん!! ここにあるのは分かるのに!! どれえええええええ!!!」
どこを見ても同じような花、同じような色、同じような香り。
「これ……運ゲーじゃん!!」
花びらが宙を舞う中で、絶望と根気の勝負が続く。
──さらに別の場所。
「100点連続10回って……嘘やろ……」
広い空間の中で、筆記試験のような紙とペンを手に、少年が絶望していた。
「こちとら最高点60やぞ……平均40やぞ……」
目の前の問題用紙が無慈悲にまた一枚、ぴらりと降りてくる。
「ていうか、これって何科目あるん!?」
──そして、森の奥深く。
「ぐるるるるるるるる……」
獣の唸り声が響いた。
「うあああああああ!!?!? あの角!! あの角が魔力石だということは分かるのにぃぃぃ!!」
そう叫ぶ少年の目には、見慣れぬ巨大な魔物の姿が映っていた。
「行けない……でも欲しい……でも行けない……いやだあああああ!!」
声が森にこだまする。魔物は首を傾げた。
──また、ある少女は洞窟の入り口で立ち止まっていた。
「ぴえん……暗いの無理……マジで無理……」
中からは冷たい風が吹き出している。
「こんなところにあるとか誰得なの……! 無理だってば……!」
けれど、その瞳は泣きそうでも、奥に光る決意が宿っていた。
それぞれの場所に、それぞれの“試練”。
苦しさと恐怖と困難と、でもそこには、ほんの少しの興奮と希望。
──それでも。
「負けない……!」
「絶対に、見つけるんだから!」
「僕にだって、やれる……!」
それぞれの生徒たちは、己の力と信じる心だけを頼りに、ひとつひとつ──目の前の壁に挑んでいく。
魔力石は、魂に応える形でそこにある。
ただし、“手に入れる資格”を持つ者だけが、それを掴むことができる。
この試練は、命を削る試練。
だが、同時に“生きている”ことを証明する、戦いでもあった。




