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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第2章『終焉の茶会、再建始動』

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09.完成、終焉の茶会

「これで……とりあえず、完成〜」


カノンが手にした最後の板を屋根に打ち付けると、パチンという軽い音が響いた。

乾いた空気の中、その音が小さく弾み、作業が一区切りついたことを知らせる。

仮拠点だった建物は、簡素ながらも“ギルド”と呼べる体裁を整えていた。

木の香りがわずかに漂い、瓦礫の匂いに混じって新しい空気が流れ込む。


「見て見てっ!」


クロマが自作のカウンターに身を乗り出す。

作ったばかりの木材がきしりと鳴り、彼女の興奮が伝播するように揺れた。


「ここに依頼票を貼って、こっちにごはんを出して……!」


「その順番、間違えると大惨事だよ」


月がハンマーを下ろしながら、完成したばかりの炉の温度を確認する。

炉の中では赤い火が静かに息づき、まだ外の空気に慣れていないような揺らぎを見せていた。


「でも、仮設としては悪くない。材料も、足りてる」


「オレの幸運が、いい感じの木材を引き寄せたのだっ!」


帝がふんすと胸を張った。

光に照らされて誇らしげに立つ姿は、どこか得意満面だ。


「……それ、たまたま瓦礫の下に埋まってただけだよね」


「運も実力なのだっ!」


食堂スペースには、拾い集めた椅子やテーブルが並べられ、

簡素ではあるが、誰かが座ればすぐに“日常”が始まりそうな温もりがあった。

寝床として使える仮ベッドも、それなりの数が用意され、布の端が風に揺れていた。


全員が手を止めたそのとき、マスターが一枚の板を抱えて現れた。

顔が既に「褒められる気満々」の笑顔になっている。


「じゃーん! 看板、できましたっ!」


「何書いたの?」


月が尋ねると、マスターは板をくるりと裏返す。

動きと同時に、板についた焦げ跡が陽光を反射した。


「終焉の茶会!」


その文字は、不格好で、焼け跡の中から拾った板に雑に書かれていた。

けれど、それが逆に“この場の再出発”をよく表していた。

削れて歪んだ線でさえ、ここに立ち上がった小さな希望の証のようだった。


「じゃあ、設置するね~!」


クロマがぱんっと手を叩き、看板を取り付ける準備に入る。

動くたびに布切れがひらひらと舞い、夕風に乗って揺れた。


「……ほんとに、またこの名前でやるの?」


カノンが半ば呆れながらも支えている。

看板を持つ腕が、少しだけ力強くなった。


「壊れたのは建物。名前は、残ってる」


月は釘を打つ手を止めずに答えた。

その声音は静かだが、そこに込められた意図は揺るがなかった。


「ギルド・終焉の茶会、再起動っ!」


マスターが満面の笑みで叫んだ瞬間、風が吹いて看板がかすかに揺れた。

夕陽に照らされて板の影が地面に落ち、それが何かの始まりを告げるように見えた。

誰も何も言わず、それをしばらく見つめていた。


その夜。

全員で囲んだ簡素な食卓には、派手な言葉も特別な儀式もなかった。

火の周りに集まった影が揺れ、食器の触れ合う音と笑い声だけが静かに響く。

その光景は、過剰な飾りよりもよほど温かかった。


月は火加減を見ながら、ぽつりと呟いた。


「……次は、棚」


「まだやるのか……」


呆れた声と笑いが重なった。

炎のゆらぎが天井の板を照らし、細い影が小さく揺れた。


“再出発”は、静かに、でも確かに始まっていた。

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