表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第2章『終焉の茶会、再建始動』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/161

09.完成、終焉の茶会

「これで……とりあえず、完成〜」



カノンが手にした最後の板を屋根に打ち付けると、パチンという音が響いた。

仮拠点だった建物は、簡素ながらも“ギルド”と呼べる体裁を整えていた。



「見て見てっ!」



クロマが自作のカウンターに身を乗り出す。



「ここに依頼票を貼って、こっちにごはんを出して……!」



「その順番、間違えると大惨事だよ」



月がハンマーを下ろしながら、完成したばかりの炉の温度を確認する。



「でも、仮設としては悪くない。材料も、足りてる」


「オレの幸運が、いい感じの木材を引き寄せたのだっ!」



帝がふんすと胸を張った。



「……それ、たまたま瓦礫の下に埋まってただけだよね」


「運も実力なのだっ!」



食堂スペースには、拾い集めた椅子やテーブルが並べられ、

寝床として使える仮ベッドも、それなりの数が用意された。


全員が手を止めたそのとき、マスターが一枚の板を抱えて現れた。



「じゃーん! 看板、できましたっ!」


「何書いたの?」



月が尋ねると、マスターは板をくるりと裏返す。



「終焉の茶会!」



その文字は、不格好で、焼け跡の中から拾った板に雑に書かれていた。

けれど、それが逆に“この場の再出発”をよく表していた。



「じゃあ、設置するね~!」



クロマがぱんっと手を叩き、看板を取り付ける準備に入る。



「……ほんとに、またこの名前でやるの?」



カノンが半ば呆れながらも支える。



「壊れたのは建物。名前は、残ってる」



月は釘を打つ手を止めずに答えた。



「ギルド・終焉の茶会、再起動っ!」



マスターが満面の笑みで叫んだ瞬間、風が吹いて看板がかすかに揺れた。

誰も何も言わず、それをしばらく見つめていた。


その夜。

全員で囲んだ簡素な食卓には、派手な言葉も特別な儀式もなかった。

あるのは、火の周りで交わされる、当たり前のような笑い声だけ。


月は火加減を見ながら、ぽつりと呟いた。



「……次は、棚」


「まだやるのか……」



呆れた声と笑いが重なった。

“再出発”は、静かに、でも確かに始まっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ