07.武器と覚悟と、命の証明
初夏の教室には、淡い日差しと共に緊張感が漂っていた。
黒板の前に立つシルフは、昨日に引き続き「魔力石」についての授業を進めていた。
「昨日話した通り、魔力石を取得するだけでは不十分だ。今日はその後について話す」
そう言ってチョークを走らせるシルフの横で、万里が手を挙げた。
「いい? 魔力石を見つけて、武器に加工して終わりじゃないの。ちゃんと“使える”ようになって初めて、一人前の魔術師として認められるのよ」
万里の補足に、生徒たちは一斉にノートを取る。
シルフは軽く頷いて続けた。
「その通り。魔力石武器の扱いが、高等部に進学するための条件だ」
「中等部4年になるまでに、しっかりと使えるようになっておけ。じゃないと、進級できないからな〜」
「え!? 嘘でしょ!? そんなの聞いてない!」
新入生たちが悲鳴を上げる。
その横で、留年組がゆるく手を挙げてのんびりと口を開いた。
「知ってる〜、でもまだ扱えな〜い」
「魔力コントロールもできないくせに!? ずるい!!」
怒りの声に、留年生が冷静なトーンで返す。
「プールサイドに沈めるぞ?」
教室はざわつき、シルフが手を叩いて制した。
「静かに。──いいか、これから話すことは冗談じゃない」
シルフは表情を引き締め、生徒たちを見渡した。
「この“魔力石の取得実習”だが、冗談抜きで“命を落とす危険”がある」
「去年、中等部2年に進級した生徒も、留年組も、全員無事に戻ってこれた。それは本当に幸運だっただけだ」
「だが、今年も同じとは限らない。それだけは覚悟しておけ」
空気が一変し、誰もがごくりと息を呑む。
「だからこの実習には“保護者の許可証”が必要だ」
「いいか? 命を落とすかもしれない。そのリスクを保護者に理解してもらい、署名をもらってこい」
「えぇぇぇえええええ!?!?!?」
驚愕の声が教室に響く。
「この許可証がない者は、実習に参加できない」
「提出期限は1週間後。忘れずに」
シルフはそう締めくくると、黒板に大きくこう書いた。
──命を守る覚悟──
チャイムが鳴り、授業は静かに終わった。




