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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第14章『終焉の茶会、魔力の予鈴が鳴る』

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06.石と力と、試練の予告

初夏の柔らかな風が、教室の窓から吹き込んでいた。

中等部1-Aの教室では、今日も落ち着いた雰囲気の中で座学の授業が進められている。


黒板の前に立つシルフは、教壇にチョークを置き、教室をゆっくり見渡した。


「今日は“魔力石”と“魔力石武器”について説明する」


その言葉に、ぴりりと教室内の空気が変わった。

静かにノートを取っていた生徒たちが、顔を上げる。

なかでも万里、クロマ、ラミリスの三人は、何かを察したように互いに目を合わせた。


「来月最初の週、夏休みに入ってすぐ――一週間の実習授業を行う。その目的は“魔力石の取得”だ」


教室がざわつく。


「来たか……」万里が低く呟く。


「んー……これは間違いなく、あれなんだよ……」クロマが肩をすくめる。


「マジで無理かと思ったけど……なんとかなった……いや、死ぬかと思ったけど」ラミリスは目を伏せる。


「……オレ、行ったっけ?」ゴローが首をかしげる。


三人、声を揃えて言った。


「行ってるわ!!」


教室の一角で軽い笑いが起きる。


シルフはそのまま板書を続けた。


「魔力石とは、魔術を本格的に扱う者にとって必要不可欠な“核”だ。特殊空間の中に存在し、そこに入れば自分の魔力石の位置が自然と分かるようになる。ただし、取得には“個人ごとの試練”があり、簡単には手に入らない」


「勝手にわかるの? 魔法?」カノンが首をかしげる。


「本能的に、というのが近いな」シルフが頷いた。


チョークが黒板に走り、次の項目が書き出される。


「魔力石を得たら、専用の鍛冶職人がそれを武器や防具に加工する。それが“魔力石武器”だ。これは持ち主にしか扱えず、落としても必ず戻る。破損した場合は再び試練を受けなければならない」


教室が一気にざわめいた。


「えっ、なにそれ地獄……」

「試練ってやり直し効かないと思ってたのに!」

「……ってことは、壊れたらまた死にかけるの?」


生徒たちの不安と動揺が空気に滲む。


「私は運良かったほうだと思う」万里が小さく呟く。


「まあまあキツかったんだよ」クロマが苦笑する。


「うん……生きててよかった……」ラミリスが遠い目で呟いた。


「オレ、ほんとに行ったっけ?」ゴローが再び聞く。


「行ってるわ!!!!」


生徒たちの笑いが再び教室を和ませる。


だが、シルフの声はそこに重く響いた。


「今年度の実習対象は“未取得者のみ”だ。取得済みの者は同行しない」


教室が静まり返る。


カノンが不安そうに呟いた。


「……ぼく……できるかな……」


その隣で、帝が顔をしかめる。


「そ、そもそも……入れるのか? オレの魔力石の場所……天の上にあるんじゃないのか?」


「え?」「どゆこと?」と、生徒たちがざわめき始める。


教室に、不穏で、不思議な予感が、静かに立ち込めていた。

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