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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第14章『終焉の茶会、魔力の予鈴が鳴る』

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03.魔術座学、四天王と二匹のバカ

「この魔術式における属性変換ですが──」


シルフの説明が、黒板に流れるような魔力式とともに続いていた。


教室は整然とし、生徒たちの集中した視線が注がれている。


その中、教壇に立つシルフは、振り返りながら問いかけるように黒板を指差した。


「これは、どのように変換効率を高めればいいでしょう?」


「術者の意識の流れと属性の相性によって効率が変わります」


即座に答えたのは万里だった。


「たとえば炎属性だと、最短式で三工程省略できるんだよ」


クロマも自然に言葉を継ぎ、チョークを取って隣に補足の式を書き加える。


「氷と風は相殺式が便利だよなー。無詠唱対応も楽になるし」


ラミリスの補足に、教室がざわついた。


まるで予習を済ませた上級生たちのような知識量。


「……はい、正解」


シルフが苦笑する。


ゴローがぽつりと。


「オレ、なんにもわかんねえ……」


誰も驚かない。

むしろ、それが“日常”のように受け止められていた。


「この変換式、旧大陸式の名残が見えるのだ。なるほど……懐かしいのだ……」


帝が机上のノートをなぞりながら、遠い目をする。


「ぼくも懐かしいって言いたい!」


カノンが勢いよく手を挙げるが、すぐ隣の帝と比べると空虚な響きしかない。


シルフが両者を見比べ、深く溜め息をついた。


──同じギルド所属でも、ここまで知識の差があるなんて……。

それにしても、帝くんとカノンくん……どうしてこうも差が……。


* * *


休み時間。

生徒たちがぞろぞろと席を離れ、三人のまわりに集まりはじめた。


「この術式ってやっぱり難しいですか?」


生徒の質問に、クロマが優しく笑いながら答える。


「んー、慣れれば平気なんだよ。感覚で覚えるといいんだよ」


「先生の説明よりわかりやすい……」


生徒の小声に、シルフの耳がぴくりと動いた。


──……この状況、授業進行がラクすぎる。

まさか……これも最初から計算して配置したっていうのか?


不安と安堵が混じるようなモノローグを胸に、彼女は教室をあとにした。


* * *


職員室。


資料を抱えて戻ってきたシルフを、いつものように月が迎えた。


「お疲れ様です。今日はどうでしたか?」


明るく笑顔を浮かべる月。


その無垢な顔を見た瞬間、シルフの肩から力が抜ける。


「……………………はあ…………あんたって人は……本当に………」


月は首をかしげたまま、「???」という顔でただ見つめていた。

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