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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第14章『終焉の茶会、魔力の予鈴が鳴る』

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02.ようこそ地雷トリオ

朝の教室は、まだ緩やかなざわめきに包まれていた。


生徒たちが思い思いの席で雑談を交わし、教科書を広げたり、うとうとと眠気と戦っていたりする。


そこへ──音もなく教室のドアが開いた。


「入るよ」


浮かぶ風の精霊、シルフの声が短く響いた。


その背後に続くのは、三人の異なる空気をまとった人物たち。

万里、クロマ、ラミリス──


マスターからの厳命により、強制的に編入された三人だった。


その姿を見た途端、真っ先に立ち上がったのは、教室の奥に座っていたゴローだった。


「なんで?!」


教室にいた誰もが、一斉に三人へ視線を向けた。


……しかし、三人は一言も発さなかった。


揃って無言。

まるで“ゴロー”という存在そのものが視界に入っていないかのような反応。


シンとした空気が教室を満たし、微かなざわめきが静まっていく。


ゴローは呆然としつつ、自席へと座り直した。


シルフが前に出て、手を叩く。


「はい、それじゃあ……ちょっと静かに。新しく編入してきた三人を紹介するよ」


生徒たちは反応に迷いながらも、なんとか視線を前へ向ける。


「じゃ、自己紹介を。属性も含めて簡単に」


シルフに促され、三人が順に前へ出る。


万里が一歩進み、冷たい表情のまま口を開いた。


「万里です。属性は氷」


そのまま何の感情も込めず、一礼もなく席に向かう。


次にクロマが、やや控えめに手を上げて微笑む。


「クロマだよ。属性は炎だよ」


声は柔らかいが、どこか距離を置いた響き。

彼もすぐに席へ向かう。


最後にラミリスが、やや前かがみで寝癖を気にしつつぼそっと言う。


「ラミリスだ。属性は炎だ」


そのまま、眠そうに目を擦りながら一番後ろの空いた席へ座る。


三人の挨拶はあまりにも簡素で、あまりにも感情がない。

教室内には重たい緊張が、かえって増幅していった。


シルフが深くため息をつく。


「……はい。というわけで、新しい仲間が増えたので皆、仲良くするように」


微妙な反応を示す生徒たち。


その中で、一人の少年が立ち上がった。


「……姉さんが………なんかごめんね」


立ち上がったのはカノンだった。


シルフが少し目を細める。


「うん………もう慣れた」


「もし、あまりにひどかったら、黙れこの穢!!って言えばいいからね」


「いや、むり」


教室に、くすっとした笑いが漏れた。

一瞬だけだが、張り詰めていた空気が緩む。


だが、シルフの目は完全に笑っていなかった。


チャイムが鳴る。

授業の始まりを告げる音。


三人はそれぞれ無言のまま着席し、周囲の生徒たちとも目を合わせないまま、静かに1-Aでの生活を始めた。


シルフは教壇の前に立ち、黒板にチョークを走らせながら、小さく呟いた。


「……頼むから、もうこれ以上は増やさないでくれ……」


その声が教室に届くことは、なかった。

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