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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第13章『終焉の茶会、魔王は微笑む』

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09.静謐なる森の決断

静謐な森の奥、木漏れ日が差し込む円形の広間に、エルフの教師たちが並んでいた。


族長の前に膝をつく三人の顔には、深い疲労と、わずかな緊張がにじんでいる。


「それで……“その時”のことを、もう一度詳しく聞かせてくれ」


族長の低く重い声に、最も年長の教師が口を開いた。


「月という少女の中に、“憤怒の魔王”の核が存在しています。そして……闘技場で彼女が傷を負ったことで、その魔王が顕現しました」


静かな声だったが、その言葉が落ちると、空気がわずかに震えた。


「……あの、“憤怒の魔王”が……?」


族長が眉をひそめ、森の静けさが一層深まる。


一瞬の沈黙ののち、別の教師が言葉を継いだ。


「間違いありません。自ら“憤怒の魔王セレス”と名乗りました。そして、聖女の中に核を定着させていたと……」


族長は手を組んだまま、長い間何も言わなかった。


やがてその沈黙を破ったのは、報告を終えたエルフたちの方だった。


「……我々の正直な感想を申し上げます。聖女に敵対することは、イコールで“憤怒の魔王を敵に回す”ことと同義です」


「今後、軽々しく聖女を試すような真似は避けるべきです」


その進言に、族長は重々しく頷いた。


「聖女が聖女として振る舞っている限り、我々が敵意を抱く理由はない。……協力は惜しまんよ」


その言葉に、三人のエルフは思わず顔を見合わせた。


報告の重さが少し和らいだような気がしたのも束の間、最年少のエルフが、遠慮がちに手を挙げた。


「……あの。次年度からは、子供たちをエルミナ学園に通わせるとの方針でよろしいでしょうか?」


「うむ。正式に認めよう。……彼女が“秩序の破壊者”ではなく、“守護者”であると判断するに至った。今はな」


族長の返答は、まるで木霊のように広間に響いた。


少し安堵の空気が漂う中、最年長の教師が再び口を開く。


「では、次に……こちらの要望を。……“月月火水木金金”、毎日8時から18時の勤務体制、あれは……死人が出ます。なんとかなりませんか?」


懇願にも近いその声に、族長は目を閉じたまま静かに言い放った。


「無理だ。だからこそ、お前たちの中でも特に頑丈な者を選んだのだ」


一瞬の静寂の後――


「くっそジジイ!!!!」


三人の教師が声を揃えて叫んだ。


静謐なる森に、今だけはちょっぴり騒がしい声が響き渡った。

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