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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第13章『終焉の茶会、魔王は微笑む』

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06.赤い瞳の魔王

エルフたちの連携魔法が炸裂する直前だった。

空気が、変わった。


静寂を破ったのは、燃え上がるような轟音と共に広がった――黒い炎。


「な、なんだ!?」「魔法……? 炎!?」「いや、魔術が……焼かれて……」


教師陣から悲鳴めいた声があがる。だが、それに応じるような気配は、闘技場の中央からは発せられない。


ゆらり、と。

月が顔を上げる。


その瞳は、赤かった。

燃えるような、怒りの色を宿したその目に、場内の全員が息を呑む。


「……え???……赤い瞳?」

カノンがぽつりと呟く。


「お姉ちゃん、炎使えないのだが……?」

帝の困惑が続く。


黒炎が舞う闘技場の中央。

そこにいたのは、月ではなかった。


「ごきげんよう。はじめまして、セレスといいます。憤怒の魔王といえばわかりますか?」


月の口から発せられたその声は、いつもと違う低く落ち着いた調子だった。

その笑みは穏やかで、どこか懐かしさすら感じさせる。


「……なぜ、私が彼女の中に??ですか?……それはですねぇ……私が死ぬ間際に、月さんの中に、憤怒の魔王の核を忍ばせておきました。おかげで私は2度と生まれ変われませんけど………。ですが、彼女を通してすべてを観て守ることができます」


闘技場内に、張り詰めた沈黙が流れる。


「ああ、今まで表に出なかったのは、核が彼女に定着していなかったのと………彼女が心の底から助けてって言わなかったからですよ?」


セレスは、少し寂しげに笑う。


「でも………今回は違う。彼女を意図的に、意志を持って怪我をさせました。そして、血を流させた。………私、彼女が傷つくの大嫌いなんです」


エルフたちが動揺する暇もなく、セレスは一歩、前に出た。

黒い炎がその足元から立ち昇る。


手をかざすと、炎が刀の形を取る。


次の瞬間、黒い刃が空を裂き、エルフたちへ向かって振り下ろされる。


「くっ……!」

エルフの一人が高位障壁を展開するが、それすらも黒炎に飲まれる。

絶叫が響いた。


「このままでは……!」「おい、あれ、本当に月先生か!?」「嘘だろ……」


教師陣が混乱する中、グレンは自分のクラスの生徒たちの前に立ちはだかる。


「下がってろ」

「グレン先生!」


生徒たちの間に、尊敬と恐怖が交錯する。


そのときだった。


黒炎の刀が止まる。

セレスの表情が揺れる。


「……彼女が“殺さないで”と言うので止めます。」


刀が霧のように消えていく。


「今日はこのへんで引き下がりますが、私、全部見てますから。……あ、樹さんには内緒で」


最後にいたずらっぽく笑って、セレスの気配が月の中へと沈んでいった。


力が抜けたように、その場に膝をつく月。

闘技場の床は焦げ、魔法陣の残骸が黒く焼け焦げている。


「え……? なにが……?」

月は周囲を見渡すが、記憶は曖昧なままだ。


そして、残ったエルフたちは、無言で地に膝をつき、頭を垂れた。


「申し訳ありませんでした……」


場内の誰もが、言葉を失っていた。

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