07.封印、そして沈黙
仮拠点の昼下がり。
屋根と柱は整い、簡素ながらも「建物」と呼べるものが立ち上がっていた。
「ねえねえ月~、ここにこういうのつけたらどうかな~?」
クロマが紙切れをひらひらさせながら近づいてくる。
「……それ、爆発の設計図じゃない?」
「うん! マスターがくれたの!」
「却下」
即答。
その隣で、マスターがにこにこと笑っている。
「だってさ~、せっかくだから花火付き出迎え装置とかどうかなって!」
「出迎えじゃなくて、迎撃装置でしょそれ」
カノンが冷ややかに突っ込む。
帝は完成した屋根の端で、今日もポーズを決めていたが、さすがに耳をふさいだ。
「それは危険なのだ……また燃えるのだ……!」
マスターはきょとんとする。
「えーっ? 火が出るってことは、生命力があるって証拠じゃない?」
「それで全部燃えたんでしょ!!」
全員のツッコミが揃った、その瞬間――
「静かにして」
その一言が、すべてを凍らせた。
月の声は、静かで、それでいて抗えない力を帯びていた。
クロマが紙を落とす。
マスターが、口を開いたまま固まる。
ピシリ、と音がした。
気づけば二人は、透明な球体の中に封じられていた。
「え……」
帝が目を見開く。
「封印、なのだ……?」
カノンがため息をつく。
「やっぱりキレてたんだ……」
月は何も言わず、そっと石窯の温度を確認している。
マスターとクロマは、球体の中でわたわたと動いていたが、声は聞こえない。
「……音も封じてるのか」
「うるさかったからね」




