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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第12章『終焉の茶会、暴食の魔王と最弱覚醒』

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06.ご馳走とご縁とご宿泊

森を抜け、夕陽の差すなだらかな丘を越えると、視界が一気に開けた。


「うわ〜、海だ!」


カノンが歓声を上げて、荷馬車の上から身を乗り出す。

目の前に広がるのは、穏やかな波音を奏でる海。夕日に照らされた水面が、キラキラと揺れていた。


「……海を見るのも、久しぶりなのだ」


帝は荷馬車の揺れにも動じず、静かに目を細める。

二人が乗った荷馬車は、救助した老夫婦に誘われて、そのまま彼らの村まで同行していた。


「お二人とも、どうぞ、最後までくつろいでくださいねぇ」


「立派なお屋敷とは言えませんが、海は自慢ですよ」


のんびりと揺れる馬車に揺られながら、老夫婦が笑顔でそう語る。


やがて村の入り口が見えてくると、数人の村人がざわめきながら近づいてきた。


「……あれは……?」


「まさか、お戻りになられるとは……!」


驚いたように駆け寄ってきたのは、立派な服を着た村長らしき男だった。


「これはこれは……領主様のご親族であらせられるお二人が、ご無事で!」


「え?」


カノンの目がきょとんとする。


「親族……?」


「ええ、こちらのご夫妻は、実は我が領の領主様のご姉弟でして。長らく旅に出られていたのですが、無事にお戻りくださるとは!」


村人たちが拍手で歓迎し始めた。


「ま、またカノンの“運の良さ”が発動したのだな……」


帝が眉をひそめながら、小さく呟く。


その夜。

村の大きな家に案内されたカノンと帝は、立派な広間に通されていた。


目の前には、ずらりと並ぶ海の幸。

焼き魚、煮つけ、刺身、貝の蒸し物、そして見たことのない色とりどりの海藻料理。


「すごい! すごいすごい!! 僕、こんなにいっぱい魚見たの初めてかも!」


カノンがきらきらと目を輝かせ、早速頬張る。


「う〜ん、おいしい〜っ!」


その姿を、帝はやれやれと見つめていた。


「……なぜこうも展開が早いのだ……」


「帝も食べようよ! 魚、柔らかくてぷるぷるだよ!」


「俺は……腹は空いておらんのだ」


そう言いつつも、帝も一口だけ口に運ぶ。

――うまい。

だが、そんな感想は表に出さず、ただ静かに料理を見つめる。


「今夜はどうぞ、お泊まりくださいな」


老夫婦の言葉に、帝はすかさず返す。


「いや、俺たちは……」


「道は危険ですぞ。夜は魔物も出ますし」


村長が慌てて付け加える。


すると――


「じゃあ、お泊まり〜!」


満面の笑顔でカノンが即答した。

帝が口を開く隙もなかった。


「……まあ、仕方ないのだな」


一方その頃、エルノア学園の職員室では。


「現実が……重い……」


机に突っ伏す柊の声が、無力に響く。


「夢の中に帰りたいにゃ……」


ミミも同じく力尽きている。


「大丈夫です! 春休み明けには始業式ですよ〜♪」


元気よく告げるのは、月だった。


そして――


「「「やめてぇぇぇぇ!!」」」


悲鳴のような叫びが、職員室にこだました。

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