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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第12章『終焉の茶会、暴食の魔王と最弱覚醒』

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04.妄想の裏で、お仕事日和

春休み中の職員室では、いまだ混沌とした妄想が渦巻いている――

……などということは、当然ながら、カノンと帝の知るところではない。


静けさの漂うギルドの一角。

掲示板には整然と依頼用紙が並び、その前で二人の姿があった。


「うーん、これとか良くない? 僕たちでちょうどいい難易度!」


掲示板にぴょんと指を差したのは、カノン。

彼が選んだのは、魔力鉱石の採取という軽作業系の依頼だ。


「……なぜオレまで一緒に行かねばならんのだ」


隣で腕を組み、眉をひそめる帝。


「暇じゃーん」


「……否定できんのが腹立たしいのだ」


後ろのカウンターからは、ギルド職員がにこやかに笑みを送ってくる。


「まあ、二人なら安心ですね。どうぞ、お気をつけて」


「いってきまーす!」


「…………ふぅ」


◆ ◆ ◆


軽装のまま、ギルドを出る二人。

今日の仕事は、街からそう遠くない場所で、魔力鉱石を数個拾ってくるだけの内容だった。


舗装されていない道を進みながら、帝は地図を広げ、黙々と方角を確認する。


一方のカノンはといえば──


「わ、ちょうちょ! まって〜」


花の間をひらひらと舞う蝶を追って、草むらを駆けまわっていた。


「……カノン。道を外れるな」


「ねえ帝、蝶ってさ、魔物じゃないよね?」


「……違うのだ」


「じゃあ捕まえても大丈夫だね!」


そう言って、蝶を手で掴もうとしては失敗し、何度も立ち上がるカノン。


「……好きにするのだ」


◆ ◆ ◆


採取地点へ到着すると、あまりにもあっさりと鉱石が見つかった。


「ここかな〜……わ、あった!」


小さな青紫の結晶を見つけたカノンが、リュックから布袋を取り出して拾い始める。


数分後、必要分を採取し終えて、帝が周囲を見渡した。


「……本当に、簡単だったな」


「僕ってば、ラッキー体質だからね!」


胸を張るカノンに、帝は小さくため息をつく。


「帝も、きっと運良くなってきてる!」


「……カノンの隣にいる時間が長すぎるせいかもしれんのだ」


◆ ◆ ◆


採取品をリュックに詰め直し、二人は来た道を戻り始めた。


「帰ったらおやつだー♪」


上機嫌に鼻歌を歌うカノン。その後ろで、帝が小声で呟く。


「……それに付き合わされるのか」


「うん。もちろん♪」


「…………」


帝が何かを言いかけたとき、ふと彼の目が遠くを捉えた。


夕焼けに染まりつつある空の下、遠方に、うっすらと煙が立ちのぼっている。


「……あれは」


立ち止まり、じっと見つめる帝。


カノンも振り返るが、まだ距離があるせいで、ぼんやりとしか分からない。


「焚き火……じゃないよね?」


「わからんのだ。だが、あの方向は──」


◆ ◆ ◆


一方そのころ。


エルミナ学園の職員室では──


「魔王シキ様、ばんざーいっ!!」


「わしのビームじゃあぁぁ!!」


「さあ、すべてを曝け出して……?」


「拙者、心して学びまするっ!!」


もはや誰の妄想なのかすら分からない台詞が飛び交い、混沌の極みを極めていた。


まだ、月は戻っていない。


現実の仕事を淡々とこなす二人の少年と、暴走する妄想教員たち──そのコントラストは、ひどく鮮やかだった。

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