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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第11章『終焉の茶会、忘却と蛮族と通過儀礼』

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08.蛮族聖女の伝説ふたたび

通過儀礼という名の“洗礼”が終わり、学園に静けさが戻る──はずだった。


「……え!? 聖女ちゃん、強! そして怖っ!」


職員室に戻った鬼影が、どこか興奮気味に叫ぶ。

その隣では、夜行が腕を組んだまま目を細めていた。


「でも、あの笑顔とギャップに……そそられる!!」


鬼影は目を潤ませながら両手を握る。

その反応に、教師陣の数人が距離を取り始めた。


「……まあ、いつも通りだな」


樹が何気ない口調でつぶやいた。

目を閉じ、どこか懐かしむように。


「昔の月はもっと優しくて、可愛げがあって……人の話も、ちゃんと聞いてたような……」


一瞬の間。


「……いや、そうでもなかったな。昔から割と蛮族だったな、うん」


回想は即座に訂正された。


「じゃあ、昔から蛮族聖女だったんだ〜」


柊の呟きに、他の教師たちもうなずく。

カグラが苦笑しながら、


「名前のミスマッチ感がすごいわね〜。蛮族と聖女って、同居していいの?」


「いやいやいやいや! 私は蛮族じゃありません〜〜〜!」


教卓の影から月が抗議の声を上げた。

が、誰も信じる様子はない。

ぴょこっと顔を出したその姿すら、もはやコントの一幕にしか見えない。


「月先生……説得力って言葉、知ってますかね?」


ヒサメの冷静なツッコミが、室内に苦笑を広げた。


***


その中──夜行は視線をそっと、樹に向けた。


「……あの男、何者だ?」


「昔馴染みってやつ? ちょっと気に食わないわねぇ……」


鬼影もまた、樹をじっと見る。

その目に宿るのは、敵意ではなく、疑念だった。


──月の過去を知っている。

それがどういう意味を持つのか、警戒を強めざるを得ない。


だが、当の樹は椅子に深く座り込み、書類を眺めている。


「……ん。魔導具の予算、ちょっと削られてるな。月に直訴しとくか」


その声に、月がぴょんと立ち上がった。


「わたし、削ってませんよ!? 必要経費はきちんと承認してます!!」


「いや、データ上の話だって。落ち着け」


「それ、たぶんグレン先生の筋トレ器具が予算喰ってますね……」


「……あれ、また買ったのかよ」


平和と混沌が共存する職員室。


蛮族聖女の伝説は──今年も無事、学園に根付いたようだ。


そしてその伝説の渦中にある月は、今日も笑顔で仕事に励んでいる。

教師たちは思う。これが“日常”なのだと。


だが、その裏で。

月をめぐる人間関係は、まだ知らぬ火種を孕えたまま、静かに騒がしさを孕んでいく──。

次章

第12章『終焉の茶会、暴食の魔王と最弱覚醒』は、

9月2日 20時より投稿を開始します。


どうぞ、お楽しみに。

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