9 ギルドのマスター
アイツ(ムトウ)が退室してたから数時間が経った頃、目の前に手紙を持った『召喚鳩』が現れた
「俺に手紙?(これはアイツの召喚鳩···嫌な予感しかせんのだが···)読まぬ訳にはいかんよな···」
召喚鳩から手紙を受け取り内容を確認すると、すぐに大声を出して誰かを呼ぶ
「誰か手の空いてる者はいないか!!?緊急事態だ!!」
その声に反応した職員数名が慌てて入室して来た
「どうされました!!?緊急事態とはただ事ではないですよね!!?」
「ギルマス!?顔色が真っ青ですよ!?」
執務室に入って目にしたのは、顔色が青くなり、手紙を持って震えていた
「これ···読め···俺···おかしくなったかな?」
何故か途切れ途切れに話すギルマスから手紙を受け取り、内容を確認する
パタッ···ビクッ!ビクンッ!!
職員達は何も言わずにその場に倒れ、痙攣している
「大丈夫か!?気をしっかり持て!!」
ギルマスがかけより、職員に声をかけるが、反応がない
「誰か来てくれ!!救護班!!」
ギルマスは外に向かい大声を出して救護班を呼び、ギルド内は一時騒然となった
騒動から暫くして···
「アイツは何してんだ!?いくら許可が出ているからって、その日のうちにやるか!!!?」
机を叩き、大声で騒ぐ
「しかも『罠にかかって熊さんにおいしく食べられてる』って何だよ!!熊さんって『ヘルベアー』(難易度B級)だよな!!!?なんてモンに遭遇させてるんだよ!!しかもやられたのクズーノの次期当主じゃねぇか!!」
手紙に描かれた紋章を見ると『クズーノ家』の紋章だった
貴族の紋章を所持する者は貴族家当主か夫妻関係者、そして次期当主だけだ
他の人が特別に所持する場合は少し意匠を変えてある為、見分けはつく
ギルドには必ず『貴族家紋章一覧表』の資料があり、どこの貴族の紋章かを確認する事ができるのだ
「すぐに事実確認の人間を送れ!!場所は森の入り口から2·3時間は進んだ場所だ!!油断するな!!」
ギルマスが職員達に号令をかけると職員達は冒険者達に通達し、すぐに出発の準備を整える為にギルド内を慌ただしく動くのであった
出発準備開始から30分後
会議室に集まった冒険者パーティー達は今回の緊急依頼の内容を説明された後、職員から物資を受け取り森へ出発した
「今回調査に出発した冒険者達のランクは最低でも『B級以上』だが、無事に帰ってくる冒険者パーティーは何組になるのやら···くれぐれも死ぬなよ···」
会議室で呟くギルマスの言葉を聞いた者はいない
ギルドの規定では『森の浅い調査』ならば、冒険者ランクは『D級』から受けられるが、今回の位置は難易度は高くは無いが『ヘルベアー』が出た事により難易度の見直しを決定。安全を考慮して『C級』以上に変更した
今回の調査現場となった森の難易度が高い事を気にしないムトウは、やはり『特級』(人外クラス)なのだろう
そして当の本人は···
「洞窟見っけ!何か潜んでいるのかな?」
暢気に洞窟を発見し、洞窟内を探索する事にしたのであった




