64 白い竜?
「おいおい···勘弁願いたいねぇ···。こんな所にいていい奴じゃないでしょ?お前···」
ムトウは目の前にいる大きな竜に向かって呟く
『···。なんだ?人間か?我の縄張りで何をしておる?』
白い竜はムトウ達を見て疑問を投げかけてきた
「!?人の言葉を理解するってぇと···あんた『龍』の方か!?」
ムトウは驚いてつい大きな声で聞いてしまった
『うむ。我はお前達には龍種と呼ばれていたな···それで?我の縄張りで何をしておる?』
こちらの質問にも答えてくれるあたり、冷静なタイプの様だ
本来『龍』は
気性が荒く、無差別に攻撃をする『竜』と違い、『知能がとても高く、争いを余り好まない』種だ
しかし、『怒りを買えば国すら滅ぼす』と言われている『天災級』の魔物だ
「ここはあなたの縄張りなんですか?去年の冬にはいなかったので、知りませんでした」
アリスを庇いつつ話をすると
『あぁ、前の冬にはおらんかったからな。餌場を変えてここにしたのだ』
おぉぅ···なんて不運な···
これから暫くはここいら一帯は不可侵領域になるぞ···
「そうなんですか?我々はこの『木の実』を採取しに来たんです。もう帰りますので、お邪魔しました~」
採取した木の実を見せて帰る事を伝える
龍は雑食ではあるが、基本的には魔物や動物を好んで食べている
これであとは速やかに街まで帰れば依頼完了だ
『ふむ···木の実採取か。···一つ聞くが、その実はこれからも採りに来るのか?』
白い龍は木の実に興味を示して来た
ここで返事を間違えれば命はない
いや、ムトウ1人ならなんとかなる
しかし、アリスがいるので無茶は出来ない
「正直に言いますと『分かりません』としか言えません。今回は『これで足りる』かも知れませんし、もしかしたら『足りないので、他の者が訪れる』かも知れません。しかし、我々が街に戻り次第『ここには来ない様に警告する』事は約束します」
まぁ、俺が言っても馬鹿は来るけどな···
見ただけで理解るほど美しい鱗を持つ龍がいるんだ
一攫千金を狙う愚者は来るだろう
俺に出来る事は街に被害がない様にする事だけだ
『···そうか。では、お前達は見逃してやろう。しかし、再び来る事があれば、···命を賭けよ』
白い龍はそう告げるとどこかへ飛んで行ってしまった
「助かったぁ···。アリスは平気だった?ライちゃんもおとなしくしてくれてありがとうね」
アリスとライちゃんにお礼を言って荷物を纏める
さっさと街に戻ってこの事を報告しなければならないからだ
アリスもその事を理解しており、手早く荷物を纏めてムトウの後ろをついて来る
2人は休憩無しに歩き続け、街に戻ると領主邸へ向かい、事情を話して宿へと戻った
「あとは領主の仕事だから、俺達は休もうね」
疲労でクタクタなアリスをお風呂に向かわせ、ムトウは依頼の木の実をまとめておく
そしてアリスが寝たのを確認したムトウも自分の寝室へと入り、ベッドに倒れ込んで意識を手放すのであった




