63 冬の採取依頼
昼食が終わり、出かける準備も済んだムトウ達は街の西門から出て雪が積もった平原へと向かう
「今回の採取依頼は『冬のみに実をつける木の実を集める』だよ」
「この木は種類が幾つかあってね、『種類不問で可能な限り採取して欲しい』って依頼があったんだ」
雪原を迷いなく歩くムトウと、その後ろを歩くアリス
ムトウの歩いた道を外れない様に言われている為、アリスは比較的楽に進む事ができている
そして歩く事2時間···目的の木の場所に到着した
「綺麗な色···これ食べられるの?」
アリスは目の前の木の実を見て聞いてきた
木の実はそれなりの大きさでカラフルな色をしていて、一見食用には見えない
「一応食べられるけど、オススメはしないかな。当たり外れが大きいんだよ」
木の実を1つ手に取り、軽く洗浄して外皮をむき、アリスに渡す
アリスは少しだけ食べると目を輝かせる
「あま~い!!お汁がいっぱい」
どうやら当たりを引いた様だ
この木の実は『当たりは甘いが、外れは苦渋くていつまでも口に残る』為、度胸試しにも使われる事がある
しかし、ちゃんと処理をすると甘く食べ易い物になる為、それなりの人気はある
では何故これが『錬金ギルドの依頼なのか?』だが、この実を甘くする方法が錬金術なのだ
以前他のギルドが試してみたが、全て失敗に終わり、錬金ギルドだけが唯一成功した
そしてその製法は秘匿され、専門部署で期間限定で生産されている
こうなると錬金ギルドの独り勝ちになってしまうのだが、そうはならなかった
錬金ギルドは木の実の採取をするには実力不足で、その木の場所まで到着する事が困難だった
そこで他のギルドと話し合い、他のギルドは採取依頼をこなす代わりに販売権利の一部を利用可能になったのだ
これにより冒険者ギルドでは毎年恒例の依頼となり、冒険者達には「冬でも仕事をする事が出来る」と好評になった
しかし、前に述べた様に『冬の採取依頼は危険性が高い為、徐々に受ける人が減り難易度の高い依頼となってしまった』のだった
辺りが暗くなるまでムトウとアリスは、木の実を魔法袋に入れては移動を繰り返した
「これだけ収穫出来たなら、今年分は大丈夫かな?アリスの方はどう?」
ムトウは自分の採取用の魔法袋の中身を確認するとそれなりの量を収穫していた
「1割くらい?はい」
アリスも魔法袋を開き、見せてくれた
アリスの魔法袋もかなりの量を収納出来るので、その1割ならかなりの量だ
「2人合わせて3000個ってところかな?」
今年の収穫量は多いな
これを食糧としている動物や魔物が少ないのか?
これまでの道のりを思い返すと『ここまで来るのに魔物や動物に遭遇する事が少なかった』事に気がつく
「どうやらまた『歓迎しないお客がいる』のかな?」
以前のコカトリスの様に『本来ここにはいないモノ』が来たのかもしれない
そう考えた瞬間、ムトウはアリスを抱えて大きく飛び退く
ドンッ!!
ムトウ達がいた場所に何かが落ちて来た様で、大きな音と雪煙が舞う
(おいおい···何でこうも出会うかねぇ···)
おさまってきた雪煙の中から姿を現したのは、白い鱗と大きな翼を持つ『竜』だった




