60 薬師ギルドの試験
細工師に依頼してから3日が過ぎ、久しぶりの晴天の日
「今日は『薬師ギルド』でランクを上げる試験を受けよう。大丈夫。今のアリスなら確実に合格するよ」
ムトウは朝食を終えたアリスにそう告げる
「わかった。準備する」
アリスは部屋へ戻り、ポーチを袈裟懸けにして戻って来た
アリスは外に行く時必ずこのポーチを持って行く
どうやらお気に入りの様だ
「それじゃあ、試験時間まではまだ早いから、先に『錬金ギルド』で買い物しよう」
錬金ギルドには様々な『錬金道具』や『素材』が売っていて、他の店より安く手に入る
今回のお目当ては『アリス用の錬金道具一式』(練習用)と『素材セット』だ
回復薬も錬金の一部になるが、これは薬師ギルドの領分になる為、錬金ギルドでは『特殊な鉱物』や『魔物の素材』を主に扱っているのだ
2人は錬金ギルドで『初心者用錬金術セット』(鉱物編)を購入し、次は薬師ギルドへ向かう
薬師ギルドでは、最初にアリス作の『回復薬』を鑑定してもらい、昇級試験を受ける事を伝えた
試験内容は『回復薬の知識と実技』
知識は『正しい薬草の見分け方』『製作手順』で、実技は実際に『回復薬』を製作し、規定のランクと本数を制限時間内に製作出来れば合格となる
今回の試験内容は『2時間内で10本中回復薬(下)以上を5本作れ』である
回復薬は『(作り慣れていれば)1本5分で出来る』が、初心者には余裕は無いだろう
約4時間後すべての試験が終了したので、受験者達は結果を受け取り解散となった
アリスは知識問題はほぼ満点で通過し、実技も時間に余裕を持って合格していた
試験場から出て来たアリスの手には、新しい『ギルド証』が握られている
これによりアリスの薬師ランクが『E級』になった
「おめでとう。今日はお祝いだね」
「ありがとう」
アリスの頭を撫でると、アリスも嬉しそうに笑う
最近になってアリスはよく笑顔をみせる様になった
これはムトウに対して信頼してくれているのだろう
内心嬉しくなるムトウは
「合格祝いとしてアリスの好きな食べ物を食べよう。何でもいいよ~。『アースドラゴンのフルコース』でも『キングミノタウロスのフルコース』でも可能だよ?」
今挙げた2つは、ムトウの格納庫にある食材の中でも『最高級食材』の一部だ
他にも色々とあるが、アリスの身体を思うと、『これくらいまでなら大丈夫な範囲だ』と判断したのだ
『強い魔物は美味しいが、身体ができていない子供には毒となる』
これは食材となる魔物の魔力量によるもので、あまりに強力な魔力を含む食材を食べると、『身体が耐えられずに命を落とす危険性もある』のだ
本来のアリスくらいの年齢だと食べる事は無理だが、ムトウによって魔力器官を毎日鍛えられたアリスなら余裕で耐える事が出来るのだ
そして耐える事が出来れば、魔力強化にもなり、更なる成長も可能となる
「でも、量は少しずつだけどね?大量に食べたらダメだけど、また次の機会にご馳走するよ」
注意するところはちゃんと注意するムトウに対し
アリスも「そんなに高級な物を大量に食べたくない」と返す
わりとしっかりとしているアリスに少しだけ寂しさを覚えたムトウだが、今回の合格祝いには他にもプレゼントを用意するので、あまり気にしない事にした
そして、アリスの肩に潜むライちゃんだけは少し残念そうにしていたが、アリス達に気がつかれる事はなかった···
プルプル···(しゅん




