58 冬越えを待つ
ゴブリン討伐から数日が経ったある日
「そろそろ旅を再開しないの?」
アリスからそう聞かれた
「う~ん···これから冬になるから、なるべく移動しない方がいいと思うんだけど···アリスはこの街には飽きたのかい?」
これから冬になると、雪道の移動となる
当然寒さとの戦いだけでなく、森の恵みも減る為、狩りが難しくなる
アリスがそれなりに成長しているとは言え、まだ幼い子供だ
冬の旅路は辛いだろうと思い「春が近くなるまではこの街に居よう」と考えていた
本当は街を出て、次の街あるいは古都辺りで冬越えをする気であった
しかし、予定外の依頼が何件か入り、出発する事が出来なかったのだ
因みに予定外の依頼とは『森の魔物(特定種)の調査及び間引き』『特殊な薬草採取』等、ランクの低い冒険者には難しい依頼が『指名依頼』としてムトウに回って来たのだ
『間引き』だけなら受けなかったが、『薬草採取』はアリスの強い要望で受ける事になった
どうやら今のアリスは『薬草学』が楽しい様だ
薬草採取をして様々薬を作ってストックや売却をする
勿論売却したお金はアリスの物だ
そして採取中に遭遇する魔物や野生動物の狩りもアリスの経験となるので、『出発が遅れた事が全て悪い事』という事にはならなかった
そして数日後
季節は冬となり雪も降り始めた頃、ムトウは一人森へと来ていた
目的は『冬限定の依頼の消化』だ
冬にしか収穫出来ない野草や木の実もあり、それを目当てに行動する動物や魔物もいる
そして『季節限定』なので依頼達成の料金も高額になる為、『季節限定依頼を集中的に受けて生計を立てる者』も少なくはない···
しかし、この森の魔物達は強く危険性が高くなる為、上位の冒険者に指名(ほぼ強制)依頼が出るのだ
今回も領主からの指名依頼(ムトウは別枠)で数組のパーティーが森で依頼をこなしていた
「これで7匹目。今日はこれくらいでいいかな~」
真っ白な体毛を持つ魔物『雪猪』を格納庫にしまい、背伸びをする
依頼は『適度な間引き』なので、あまり狩りすぎても良くない
目的はあくまでも『間引き』なのだ
やり過ぎると生態系が崩れ、森の魔物達の暴走も発生する危険性もある
「あとは···木の実と薬草を採取して街に帰ろうかな」
積雪によって方向がわからないくらいになっているが、ムトウは迷うことなく森を歩く
所々に目印を設置してあるので迷わずに帰る事が出来るのだ
たまに経験の浅いパーティーが遭難したりするが、ほとんどの冒険者達は独自の目印を使っている為、迷う事なく森から帰還する
しかし、魔物によって目印が失くなったり、対処出来ずに命を落とす事もある為、今では(ほぼ強制でも)受ける人が少なくなっているのが現状らしい
※ほぼ強制となっているが、懲罰等はなく、善意頼みである
それに、上位冒険者は貯蓄がある為、冬はあまり依頼を受けないのも原因の一つでもあるが、しっかりした冒険者も少なくない為、『冬の依頼自体が消化され難い』のだった
※ムトウはそんな時でも依頼をしっかりとこなしてくれる為、多少の無理も通る様になるのは当然であった
ムトウは「今年はアリスがいるので依頼を断ろう」と思っていたが、アリス本人から
「宿で大人しく勉強しているから大丈夫。困っている人を助けてあげて」
と、言われたので今年も依頼を消化する事になったのだ
「今日のお土産は何にしようか···。冬限定の果物とかがいいかな?」
ムトウは少しだけ寄り道をして、珍しい魔物や鉱物·薬草等を採取しながら森の出入口へと向かうのであった




