5 面倒事がやって来た
返り討ち事件から3日後
ムトウはギルマスに呼び出され、ギルマスの執務室に来ていた
「今回呼び出したのは『この前の事』だ。今回馬鹿やった奴等だがな···面倒な事に『(馬鹿)貴族の(馬鹿)息子』がいやがった。そして、面子を気にした当主が『お前を差し出せ』とさ···」
ギルマスは一息で言った後、毒を吐き始める
「何で危険物をわざわざ欲しがるかねぇ···。こちらの仕事を増やすなっての···大体管理が···」
なんか失礼な事言われたけど、その事は後でいい
「それで?直接行けばいいの?相手は誰かな?」
「···クズーノ子爵だ。正直いい噂は聞かん。ここいらの腐れ貴族の1つだな」
「ギルマスも言うね~。腐っても一応貴族でしょ?それで?上(国)はなんて?」
一応俺の事で何かあれば『上(国)に報告』がされていて、こういった事がある時には、俺も上(国)の意見を(一応)聞いておく
大抵は国が馬鹿を静止するが、たまに匙を投げる事があり、こちらに『消毒(処分)依頼』が来る事もある
「上は警告はしたが、相手は無視した様だぞ?馬鹿のお使いが俺の所に来た時に『確認の為』に聞いてみたが『関係ない』って言ってたからな···。まぁ、後はお前次第だ。こちらも『注意はしたが、聞き入れてもらえなかった』からな。『あとはお好きにどうぞ』ってやつだ」
そう言ったギルマスは書類に目を通し始める
どうやら話はこれで終わりの様だ
「ふ~ん。じゃあ、こちらも好きにさせてもらおうかな。多分だけど、近いうちに結果が報告されると思うよ?楽しみにしててね~」
ムトウは笑みを浮かべて退室し、そのまま街の外へ向かう
連中の相手をするにへ街中は他人に迷惑になる
やるなら外でお迎えするつもりだ
(これから森に狩りに行く予定だったからね。ついでに森の養分にしてあげよう。森が汚染されないといいけど···大丈夫だろ)
街を出て森に入り、少し奥まで進み、食糧になる物を採取するついでに罠を仕掛ける場所に到着する
「ここいらに罠を張っておこうかな。上手くいけば『獲物が掛かる』だろうし、運が良ければ森鹿でも掛かればいいかな」
ムトウは簡単な罠を仕掛けて森を進む
仕掛けた罠は『足を縄の輪で引っかけ、吊し上げる』タイプ(くくり罠?)だ
仮に縄を切って脱出しても、着地地点に『落とし穴が深く掘られて』おり、短い竹槍が敷かれてあるので、どのみち無事では済まないだろう
落とし穴の方は『獲物を横取りしようとする不届き者』への罠が本命であり、たまに森熊等が引っ掛かってくれるのだ
森の中を気ままに歩く事数時間···数日前に来た大きな池に到着した
「よし、今夜はここで野営をしよう。折角だし、夕食に魚でも釣ってみるか」
『格納庫』から釣具一式を出して、そこら辺にいる虫を餌にして池に投げ入れる
「上手く釣れればいいな〜」
釣糸垂らして一時間···
隣に作った生け簀は···静かだった
「釣れないな〜。魚はいるのに···何故?」
呟くムトウの視線の先で魚が跳ねる
(釣れないのは餌に問題があるのか?いや、食べられているから問題は別にあるのかな)
ぼ~っと竿先の動きを待つが、見ている間はピクリとも動かない
しかし、餌は食べられている
何で釣れないかなぁ···
そんな事を考えつつ、気持ちは穏やかになっている
どうやら『のんびりとした時間』に癒されている様だ
ムトウは自己防衛の為とはいえ、命を奪った事に少しは罪悪感を抱いていたりする
『相手を殺らねば、自分が殺られる』
『生きる為に命を奪う事は悪くない』
『話をして理解し合えるのなら、そもそも命の奪い合いは起きない』
俺だって『殴られて黙っている程お人好し』ではない
『殺る気には殺る気を、それが生きる為に必要な覚悟だ。情けは自分の命を捨てるだけ』
師匠達から言われた言葉だ
(かなり癒されるけど、このまま魚一匹釣れないのは凹むぞ~)
のんびりと釣りをしているムトウに近づく存在がいるのだが、まだ出会うには時間がかかりそうで会った