41 『ケンゲキ』(の幼女)
「ムトウさんのお師匠様は何であんなに若いの?」
焚き火を前にアリスがムトウに質問をしてきた
「あ~···アレは一種の体質?なのかな?正確には『魔力による若返り』が原因らしいよ?師匠が昔話してくれたんだけどね···」
ムトウは昔の話を少しだけ話してあげる事にした
ムトウが師匠に拾われてから数年が経ったある日
「師匠は何で変わらないの?」
純粋な疑問を投げ掛けるムトウに師匠は少し考え、理由を教えてくれた
「これはね~。あたしの『体質』と『魔力』によるものなんだよ~。元々若作りだったんだけど、魔物を討伐してそのお肉を食べていたからかな?ある程度で成長が止まり、今度は『若返り』が始まってねぇ~。」
当時を思い出す様に師匠は続きを話す
「大体28歳くらいで止まってね···。それから徐々に若返っていって、この見た目になったら止まったよ。う~ん···何が原因だろう···『永遠の果実』かな?『ドラゴンの心臓』かな?アレ辺りから変わり始めた気がするんだよねぇ···」
話に出てきた『永遠の果実』はSS級の魔物『エターナルトレント』になる果実だ
この果実は『食べると老化を止める』と噂されていた
そして『ドラゴンの心臓』は食べると『身体が健康になり、若々しさを維持する』と噂されていた
どちらも貴族や王族が欲しがる品であり、『入手したら一生遊んで暮らせる富と名誉が手に入る』と言われている
師匠は「そんなものいらないからね。手に入れた時にお腹がすいていたから食べちゃった」と笑い飛ばしていた
どう考えてもその2つが原因の1つだろう···
しかし、『若返り』の効果は何処から来たのか?
それだけは未だに判明していない
多分師匠の『体質』に変な作用が働いたのだろう
師匠も「最初は苦労していたが、慣れれば便利だよ。色々とね」と言っていた
「こんな感じかなぁ···。師匠はあの姿でS級冒険者になってね。見た目に似合わない『大剣』での攻撃(剣撃)から、そのうち『ケンゲキ』(の幼女)って二つ名がついたんだよ」
「あれ?それだと『剣撃』じゃないの?」
アリスの疑問にムトウは「よく気がついたね」と頭を撫でる
「師匠の二つ名が『剣撃』ではなくて『ケンゲキ』なのはね···。師匠が最も得意とした攻撃手段が『拳』なんだよ。そして『剣』でも『拳』でも戦えるジョブが『ケンシ』なんだよ」
「師匠は普段、『手加減をする』為に大剣を使っていたけど、本当は『素手』による格闘がメインなんだ。師匠が武器を捨てた時は、すぐに避難しないと、捲き込まれて大怪我どころじゃないからね?」
「理解しました。ありがとうございます」
(それだとムトウさんのジョブは?)
そう注意をするムトウに、アリスは1つの疑問が浮かぶのであった




