39 消毒完了
ある街の貴族区域の豪邸の部屋で酒を片手に報告を受けている男がいた
男はかなりの肥満体型で、常に汗をかいているが、今回は違う意味で汗をかいていた
「まだ見つからないだと!?無能な奴らに用はない!!処分して新たに使える者を使え!!」
報告に来た執事に命令をして酒をあおる
我は貴族のクズーノ子爵現当主オーレ·クズーノ様だ
我は現在『ある男』を捜している
その男は我が一族に牙を向け、我が家の尊き血を流した罪人だ
(くそっ!!どいつもこいつ使えん奴らだ!!)
イライラしながら何杯も酒をあおり、グラスを壁に投げて粉々に割る
「片付けておけ」
控えのメイドにそう言って寝室に向かい、ベッドに寝転がる
そして暫くすると眠気がきたので、そのまま眠りについた
暫くすると、外が異常に騒がしくなっている様で、騒音に目を覚ます
「なんだ!?うるさくて眠れぬわ!!」
イライラしながら寝室を出ようと扉のノブに手をかけると、扉が勢いよく開かれた
ドガンッ!!(ゴッ!!)ゴロゴロ···
『開かれる』と言うよりも『蹴破られた』と表現した方が正しい音をさせ、扉が我に直撃してしまい、我は床を転がる
(何が起きた!?賊でも入ったか!?)
痛みで朦朧とする頭で目の前を見ると、全身黒ずくめの人間?がいた
「誰だ!!我をクズーノ子爵と知っての狼ぜ···」
ヒュッ!!···ゴロゴロ···
最後まで言う事は許されずに我の首と身体が別れる
(一体何が···何故我の身体があそこに···)
クズーノ子爵が最期に見た光景は絨毯を赤黒く染める我の身体が倒れている姿と、その近くに立つ黒ずくめの人間?の姿だった
時間は少し遡り···
日が沈み街が闇夜に支配され始める頃、冒険者ギルドのある一室ではギルマスと執事服を着た初老の男が話をしていた
「なるほど。遂に『消毒』になりましたか」
ギルマスが1枚の紙に書かれた事に目を通して問いかける
執事服の男は無言で頷き、小さな袋をテーブルに置く
置いた時に重い音がした為、中身はお金(金塊)だろう
「今動けるのは『俺』だけですがいいんですか?結構派手になりますよ?」
「構いません。確実に『駆逐』して貰えれば、後処理はこちらがやります」
冷たい声で答える執事にギルマスは頷き、袋を受け取る
それを確認した執事は無言で退室し、部屋に残ったギルマスはため息を吐いた
(馬鹿な奴等だな。散々『上からの忠告を無視し続ける』とは···)
「とにかく仕事だな···。決行は今から行けばいいか···。はぁ···『アイツ』にやらせるつもりだったのになぁ···」
そう呟きながらロッカーの扉を開き、着替えを始める
装備を外して制服を脱ぎ、全身『黒衣装』に着替える
顔には黒い仮面を装着し、隠してあった武器を装着していく
着替えを終えたギルマスの姿は全身黒ずくめで、腰には黒い短剣や投擲用ナイフ等がある
一目で『暗殺者』と判断出来る格好だが、街中は街灯等が少ない為に暗い場所が多い
しかも街の人々は夜には殆ど出歩かない為、目撃者はいないだろう
「さて···ストレス解消も兼ねて『消毒作業』に行きますか···」
そう言ってギルマスは窓から外へと飛びだし、仕事をしに行くのであった
翌日、貴族区域のある貴族の屋敷が出火をして全焼
生存者はおらず、出火原因は『厨房の火の不始末である』と通達された
このお達しを聞いた住民は皆口を揃えて言う
『やっと街の暮らしが改善される』
『これで少しはよい暮らしが出来るといいな』
『天罰が下った』
等と、好意的な意見ばかりだった
こうして街のゴミがまた1つ消え、街の人々は喜び、雰囲気は明るくなってゆく
そんな明るいニュースの中
「やれやれ···年には勝てねぇなぁ···かなり眠いわ···」
冒険者ギルドの執務室で欠伸をするギルマスは眠たそうに仕事をこなすのであった




