36 牧場到着
森の訓練をしながら師匠の所へ旅をして十数日後···
「到着~。ここが師匠の家と牧場だよ」
周りを山に囲まれた長閑な雰囲気の牧場と小さな家の前に、ムトウは無事アリスを連れて到着した
「(この時間だと師匠は牧場かな?)師匠〜。この子を弟子にしてあげて〜」
牧場に向かい大声で声をかけると、遠くから砂煙が上がり、こちらに何かが接近して来た
「ム~ちゃ~ん!!久し振り〜!!」
大きな牛がこちらに突進して来るが、その背には小さな少女が乗っていた
「師匠〜お久しぶりです。相変わらず小さ(ドヒュッ!!)危なっ!!」
見た目が5~7歳程の少女(幼女?)は手にしていた農具をムトウに向かって突いてくる
「お〜お〜久し振りに帰ってきたら子連れとはねぇ〜。どこで道を間違えたのかな?あたしはそんな子に育てた覚えはないよ〜?」
連突しながら話す少女とそれをギリギリで避けるムトウ
「違うよ!?アリスは保護したの!!てか、相変わらず鋭い突きだな!?」
鋭い連突を避けつつ答える
「ム~ちゃんもいい勘してるね~。先読みさせない突きを避けるんだからさ~。ほいほいほい~♪」
そんなやり取りが数分続いた後、落ち着いた師匠に案内されて家へと入る
家の中は必要最低限の家具しかなく、無趣味の人が住んでいる様だ
「相変わらず何もないですね。いや、『隠蔽が上手いですね』と言った方がいいか···」
部屋の一角を見てムトウが苦笑する
「お~。相変わらずの『看破』っぷりだね~。まぁ、実際何もなくても困らないけどねぇ~。一応『魔物』や『人間』の対策はしておかないとね?こう見えても変な輩がたまに来るからさ~」
そう言って指を鳴らすと部屋の一角が歪んで扉が現れる
どうやらこの扉の先は武器や非常食があるらしく、普段は隠している様だ
「しかし、師匠に絡む輩がいるとはねぇ···。『ケンゲキ』(の幼女)って有名なのに···」
出されたお茶をすすりながらムトウは話す
「あたしの見た目がコレ(美少女)だからねぇ~。油断して『ちょっと脅せば言う事聞く』とか思われているのだろうね~」
カンラカンラと笑う見た目が幼女(本人曰く美少女)の師匠を不思議そうに見るアリス
「それで?この子を『あたしの弟子にしろ』とはどうしたんだい?ム~ちゃんらしくないじゃないか?」
アリスの視線に気づいている師匠が問う
「アリスは珍しいジョブでね。師匠の弟子になれば安全安心に暮らせるからさ~。最初は街の孤児院に行こうと思ったんだけど、満員で空きがないから連れて来た」
ムトウはこれまでの事を師匠に話す
「なるほどねぇ···ちょっと失礼···ふむふむ···ム~ちゃん。この子は『あたしの弟子』よりも『あんたの弟子』にしなさい。その方がいい」
アリスを鑑定した師匠は自分よりも俺の弟子になる様に言うのであった




