35 ギルドのギルドマスター
俺は街の冒険者ギルドのギルマスをやっている
名前?面倒だから名乗らない方向で
どうせ「ギルマス」としか呼ばれないからな
俺が最初にギルマスとして仕事を始めたのは数年前···
右も左もわからないなりに仕事をこなしていた頃、一人の男と出会った
出会ったと言うか···巻き込まれたと言うか···
アイツはフラッとギルドに現れて受付に言ったそうだ
「この先の森で素材とお肉を狩って来たけど、量がかなりあってさ···少しでもいいから買い取れない?」
対応をした職員が俺を呼ぶ事になったのはその10分後だった
「ギルマス!!一緒に中庭に来てください!!」
いつも冷静な職員が慌てて来たのを不審に思いながら中庭に行くと、そこには魔物の山があった
「なんだこれは!?『大暴走』でもしたのか!?」
高く積まれた魔物の死体···よく見ると『A級』や『S級』も混ざっているじゃないか!?
そしてその山の近くにいるのは見た目は少年?いや、成人したてって感じだから一応大人か?
「確認だが···。これは誰が?いや、どのパーティー達だ?」
周りを見るが誰もが顔を反らす
そして皆の指はこの男を指していた
「お前か?···冒険者ギルドに登録しているのか?見た事ない顔だが?」
目の前の男に聞いてみると、男は軽い感じで答える
「冒険者ギルドには登録してないよ?森の中で狩りをしていたら手持ちが多くなってさ···」
男は軽い感じで話すが、内容がおかしい···
森の中で食糧確保は理解できる
しかし、何処をどうしたらこの量になるのだろう?
話によると「森の中を迷子になって、ようやく出てこれたらこんだけ貯まってた」だそうだ
話に出た森は『迷いの森』と言われており、奥に入るとかなりの確率で道に迷い死に至る
運良く出られる事もあるが、まず五体満足ではなく、冒険者を引退する者が大勢だった
そんな森を一人で入って迷って帰って来た!?どんだけ化物なんだよ!?
「それで、買取りは?一部は可能?ならお願いします」
職員と話をした男は数体の魔物だけを残して、全て魔法袋に収納して待ち合い室の椅子で査定を待つ様だ
あれから数年後···
「ギルマス~。何か国から呼び出しされた~。行きたくないからギルマスに任せるわ」
「いいわけないだろ!!俺だって嫌だよ!!でも仕事だから連れて行くぞ!!」
「面倒だなぁ···。他所の国行こうかな···」
「頼むからやめて!!俺が何とかするから!!」
こんなやりとりをしながらこいつを国王の前まで連れて行き、何とか『特級』にする事ができた
しかし、その後の厄介事(街周辺限定だが)は全て俺が処理する事になるのを、この時の俺は予想する事が出来なかった···
そして現在
「何で俺ギルマスやってるんだろう···。辞めたくても何故か辞めさせてもらえないんだよなぁ···。クズーノは俺が掃除しようかな···ストレス解消になるだろうか?」
ダンジョンとクズーノの件で疲労とストレスがガンガン増える中、執務室の窓から空を見てため息を吐くのであった




