34 野営地選びとダンジョン調査の報告
アリスの薬草採取も終わり、次は野営地の選び方だ
「理想は視界の拓けた所がいいが、深くて広い川の側は避けようね?雨で増水すると危険だし、魔物も水飲みに来る時がある。水棲の魔物も潜んでいる事もあるからな?」
「次はある程度視界の確保が必要だが、広すぎると相手の的になりやすい。かと言って狭すぎると近くまで来る事を許してしまい危険を伴う。最終的にはある程度の広さを自分で作る事を憶えておくといい」
他にも『洞窟や大樹の根元の空洞等も候補に入る』が、魔物等の巣になっている事が多いので、今回は除外させた
ムトウの説明を聞いて、より真剣に野営地を探すアリス
ライちゃんはアリスの頭の上で周囲の警戒をしているが、さっきから触手を伸ばして木の実(猛毒)を吸収している
何でそんなに猛毒ばかり集めるのかな?
格納庫には既に『それなりの量の毒薬』があるよ?
今は麻痺毒?種類が違うのね
後で仕分け手伝ってね···
プルプル(まかせて!!はい、麻痺毒)
ライちゃんはふるえて新たに毒薬の瓶を吐き出した
(そう言えば···。あの森の奥で見つけたダンジョンはどうなったかな?アリスの事で調査に行かなくなったからな。···アリスを師匠の所に連れて行ったら潜ってみるか···)
あの森の中にあった『D級ダンジョン』を思い出し、一応『後の予定』(後でやろうかな)に追加しておく
まぁ、D級ダンジョンだから俺が戻る頃には誰かに踏破されているだろうな···
そう思い、アリスの後ろをついて歩く
そろそろ日が暮れる頃なので、野営地を決めるよう声かけをするムトウであった
その頃、ムトウの見つけた『D級ダンジョン』の調査をしていた冒険者パーティーは街へと帰還し、冒険者ギルドへ戻って来た
「大至急でギルマスに連絡を!!ダンジョン調査に向かったB級パーティーが帰って来たと伝えてくれ!!」
そう告げたB級パーティーの彼らは、見るからにボロボロの状態だった
彼らの報告によると
『ダンジョンに到着する前に、森の魔物最低(C+)が多く出現して回復薬等を多く消費してしまい、とてもダンジョンに挑む状態ではない』
『何とかダンジョンにたどり着き、入り口を覗いてみたが、いきなりメタルガーゴイル(B+)が待ち構えていて突破は無理だ』
『絶対A以上の冒険者じゃないと中に入る事すら不可能。いや、森をまともに進めない』
等と文句タラタラであった
その報告を受けたギルマスは『大至急ムトウに戻って来る事』を他のギルドに通達するが、そのムトウ達は既にギルドのある村を出発してしまった為、連絡不可能になってしまっていた
判っている事は『小さな村のギルドを最後にどこにも顔を出していない』事で、村を出て数日経っている現在、ムトウ達が何処にいるのか不明なので先回りも追いかける事も出来ない
各ギルドで冒険者達に「どこかの街道で見なかったか?」と確認をするものの、冒険者達も他の冒険者達の事なんてほとんど覚えていない
子連れで旅をする人も少なからずいる為だ
せめて目印があれば良かったが、『これと言った特徴もない』ので余計に記憶に残らない
現在ならアリスがスライムを肩に乗せている為、見たら憶えているかもしれないが、村を出てすぐに森へ向かったムトウ達を見た人は村の門番くらいだろう
しかし、スライムも小さくなっている為、アリスの髪で隠れてしまえば周りからは見えないだろう
よって、ムトウ達は『よくいる親子の旅人』程度にしか認識されなかったのだ
「何でこう何度も面倒事が続くんだぁぁぁ···!!!!」
執務室からギルマスの悲痛な叫びが響き、周りの職員達は「ギルマスには『不幸』のスキルがあるのかも···」と思うのであった




