23 洞窟と『とり肉』
朝、竈に焚き火の火を移して朝食の準備を開始
まずは鍋に水を入れて湯を沸かし、その間に川で手拭いを濡らして体を拭く
着替え終えたあたりでアリスがテントから出て来たので、挨拶をして川で顔を洗う事を促した
アリスが洗顔をしている間に串肉を温め、湯が沸いたら塩と野菜を入れて煮ておく
朝食は簡単なスープとパンと串肉だ
料理が出来るまでの間、軽いストレッチをして身体を解していると、アリスも一緒にストレッチをし始めた
(こうして一緒に行動するのも悪くはないな)
2人の身体が充分に解れた頃、狼さんがスープが煮えた事を教えてくれるのであった
狼達には塊肉を出し、スライムにはスープと塊肉を出す
軽く焼けた串肉をパンで挟んで串を抜き、スープをよそってアリスに渡し、自分の分も手早く用意する
「よし!それじゃあ、食べようか。『いただきます』」
皆で仲良く朝食を食べる
『本当にここは危険な森の中なのだろうか?』
他所から見ればそう思える光景だが、ある一定範囲内に入ると『狼さんの範囲』だが、それよりも広範囲でムトウが警戒しているので安全確保は出来ているのだ
それに『自らお肉になりたがるもの』はそうはいないだろう?
朝食を終え、野営地を綺麗にしたら出発だ
このペースだとあと20日程で師匠の所に着くかな?
途中で馬車を利用すればもっと短縮されるが、アリスの体力的に森を抜けて街道に出るまで数日かかるだろう
焦らずゆっくり向かうことにしよう
アリスもなるべく多くを学びたいと言っていたからな
無茶等は当然しないし、安全確保は徹底するぞ
飲み水を確保し、ムトウ達は出発する
森の中の歩き方·食べられる木の実·果実·香草·薬草等を教えつつ、アリスに採取させる
昼過ぎ頃にアリスに罠の作り方を教え、実際に罠を仕掛けて今日の野営地を探すと、洞窟を見つけたので中を調べる
どうやら森の動物や魔物の寝床ではない様だ
「丁度いいから今日はここで夜を過ごそう」
空は雲が多くなり、天気が悪くなりそうに感じたからだ
「風が湿っぽいから、一雨降りそうだな。早いうちに薪を拾って来ようか。アリスはこの木の実の処理を頼むね」
格納庫から採取した木の実を出してアリスに下処理を頼み、ムトウは薪集めに向かう
洞窟には親子狼とスライムさんがいるから大丈夫だろう
ムトウはすぐに駆けつけられる範囲で薪を集めるついでに狩りをする
今回は蛇を数匹狩れたが、どれも食用には向かない蛇だ
「うぅん···少し離れた場所に『とり肉』がいるけど、アリスの安全を考えるとなぁ···。んぉっ?何故かこちらに向かって来るぞ?」
どうするか考えていると、対象がこちらに移動を始めたのがわかった
「移動速度から、何かに追われている?いや、何かに脅えて逃げ出した?」
不自然な速度で向かって来るので、索敵範囲をさらに広域化すると『強い反応が出た』
「成る程コイツのせいか。でもまぁ、こちらには来ないみたいだからいいか···。少なからず俺の利になった事に感謝しておこうかな」
格納庫から短剣を出して待ち構える
「さて、『今夜のお肉さん』いらっしゃい」
そう呟き、こちらに向かって来る獲物を待つムトウであった




