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2 街に報告に行く

朝、テントから出た男は朝食に肉を焼く


「肉が焼けるまで時間があるな···。水浴びでもするか」


竈から少し離れたところに生の猪肉を置き、男は池で水浴びを始める


離れに置いた猪肉は、昨日の狼のご飯だ


別に飼うつもりはないが、また来ると思い置いておくだけおいてみた


来なければ他の肉食生物が食べるだろう




軽く水浴びを済ませ、焼けた肉を食べる


「やはり野菜も欲しいよね。昨日のキノコも焼こう···」


キノコを取り出して軽く洗い、串打ちして遠火で焼く


キノコが焼けるのをじっと待っていると、猪肉を食べに狼が現れた


どうやら今日は子供連れの様だ


(おや?今日は子連れだったのか···。そうすると少し量が少ないかな?)


子狼は男を少し警戒していたが、親狼に促されて一心不乱に肉を食べ始める


そして親狼は周囲を警戒して、肉を食べない様だ


「子供を優先するのはいいが、お前も食べなきゃ駄目だろ~?ほら、追加の肉だ。しっかり食べな~」


『格納庫』から大きめの猪肉を狼の近くに出してやる


子狼は驚いていたが、親狼が一吠えして子狼に肉を食べる事を促し、自分も出された肉を食べ始めた


「よしよし。しっかり食べな~。こちらもキノコが焼けたみたいだね」


男もキノコが焼けたので食事をする


大きな池の近くは、暫く男と狼達の無言の食事の時間が流れた




「ごちそうさん。さて、街に行くか···お前達は元気で暮らしなよ~」


男は後片付けを終えると狼達に別れを告げ、森から出る為に行動を開始するのであった




森の中を進む事3時間


森の終わりが見えてきた


「思ったより早く森を出れたな···。狼達のお陰だな」


朝食後、後片付けが終わったので移動を開始すると、親狼が男の前を歩き始める


子狼は男の周りをチョロチョロしている


どうやら懐かれた様だ


「子狼さんはかわいいねぇ。このまま連れていきたいくらいだよ」


しかし、実際には飼う事は出来ないので、森の出入口前までの同行となった



男は森を出て一振り返るが、既に狼達の姿はない


「護衛と道案内ありがとうね~」


男は森に向かって感謝の言葉を告げて街へと向かった




街の出入口前で身分証(ギルド証)を提示して中に入る


「さて、まずは宿を取ろう。遅くなると野宿になるからね」


街の中を歩く事20分目的の宿に着いた


中に入るとカウンターに女性が立っていたので、話しかける


「すいません。1人部屋は空いてますか?」


「いらっしゃい。ちょうど空きが出来たところだよ」


どうやら部屋の掃除が済んだところだった様だ


「料金は一泊15000で、食堂もあるから宿泊特典として『お代わり自由』だよ」


説明によると『食堂を利用しなくても同じ値段』となっている


つまり、この宿は『宿泊だけなら他の宿を利用してくれ』という営業スタイルだ



「えっと、食堂の時間は決まっていますか?」


「食堂の時間は6時~10時と16時~22時になるよ」


「そして『6時~10時は宿泊客専用』だけど、夜は食事だけでも利用可能だよ」


夜は酒場みたいな営業か···


「そうそう!昼は弁当を販売しているけど、朝も弁当が欲しいなら前日までに言っておくれ」


女性は料金一覧表を見せながら説明をしてくれる


話を聞く限り、ある程度は客の要望を聞いてくれるいい宿の様だな


「じゃあ、10泊と朝昼分の弁当をお願いします」


カウンターに10日分の料金を置いて、宿帳に名前を書く


「確かに。これが部屋の鍵と弁当の引換券だよ。鍵は外に出る時は返しておくれ」


鍵と引換券を受け取り、泊まる部屋へ入ると、装備を外してベッドに腰かける


(かなり広くて綺麗な部屋だね)


今回泊まる部屋はベッドと小さなテーブルと椅子があり、トイレと風呂は別だった


「この部屋でこの値段なら破格だね。あとは飯か···うまいといいな~」



安宿だとこんな綺麗で広い部屋ではない


ほとんどの安宿だと一泊5000(雑魚寝部屋)で、食事は無し


個室だと一泊10000で寝るだけのスペースしか無い




一息ついたので、近くの冒険者ギルドに向かう


「確か···宿から歩いて20分くらいか。立地と値段的にあの宿はギルド直営か関係者の経営かな?」


食堂で『お代わり自由』はなかなか出来る事ではない


理由は『食糧確保が難しい』からだ


しかし、ギルドは依頼等で食糧(主に肉等)の買い取りも積極的にしている為、その消費先の1つとして『宿の食堂』に卸している事が多い


経営者の中には『直接狩りに行く者』もいたりするが、大半はギルドや『卸し専用の商会』との繋がりで食堂を営業しているのがほとんどだ




冒険者ギルドの建物に到着したので中に入る


ギルド内は小さな酒場があり、昼間から酒を飲んでいる者も何人かいた


そんな人達を横目にカウンターへと向かい、受付窓口にいる職員へと向かう


「依頼達成の報告に来たよ~。確認をお願いします」


砕けた感じで声をかける


「いらっしゃいませ。それではギルド証をお願いします」


受付にギルド証を置くと、職員が書類を片手に確認していく


男の受けた依頼はこの街に来る前にいた所のギルドで受けた依頼だが、依頼完了の報告はどこのギルドでも可能だ


前に聞いたのだが、『ギルド間で直ぐにやり取り出来る手段がある』らしい


通信とか転送系の魔道具の様だ



「···『D級』冒険者のムトウ様ですね。依頼内容を確認しました。証明部位の提出をお願いします」


目の前に猪の牙を出すと、職員が受け取って奥に行く


これは不正が無いかを調べる為だ




暫くすると職員が袋を持って戻って来る


「依頼達成の確認が完了しました。今回の報酬はこちらです。確認をお願いします」


俺は袋の中を見ずに職員に話す


「この金は孤児院に寄付したいんだけど、頼めるかな?」


「はい。それでは証明書(控え)を発行いたしますので、少々お待ちください」


暫くして職員から証明書を渡されたので、これで用事は済んだと冒険者ギルドを出る




(ふむ。今回は3人か···)


ギルドを出て暫く歩いていると、少し離れて後をつけて来ている気配がある


どうやら俺が孤児院に全額寄付したので、それなりに金を持っていると思い襲うつもりの様だ


(何処に行ってクズってのはいるもんだな···)


そう思いつつ、人通りの少ない道へと向かうのであった



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