サンドラの末路-1
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結婚式から数日のあいだは、サンドラはイイデンナ伯爵邸で贅沢で楽しいときを過ごした。衣類や化粧品などの必要なものは、家からすでに送られてきている。伯爵が気をきかせ手配していたのだ。「さすがはハブリー」と、サンドラはご満悦である。
「ハブリー、私ドレスを何枚か作りたいわ。リッチ・ダモンネのお店から人を呼んでくださる?」
朝食の席でサンドラはねだった。今度こそリッチ・ダモンネの新作ドレスを好きなだけ手に入れられると信じて。
「うーん、それはまた今度にしよう」
サンドラの予想に反して、伯爵はちょっと顔をしかめる。そして香りもお値段も高い紅茶を口に運ぶと、こんなことを言い出した。
「もうすぐ寒くなるから、今のうちにあなたを領地に連れて行きたいと思っているんだ」
イイデンナ伯爵領は高い山々が連なる北部にあり、冬は雪も降ってかなり寒い。しかも王都から馬車で2週間はかかる距離にあるのだ。
「領地に行くんですの?」
伯爵はめったに領地に帰らないと聞いていたので、サンドラは意外に思った。そんな彼女に、彼は優しい笑顔を向ける。
「領地邸の使用人や領民たちに、伯爵夫人を紹介しないといけないからね」
それもそうかとサンドラは思う。そして「伯爵夫人」「奥様」とかしずかれる自分を想像してウットリとした。ずいぶんと田舎らしいが、伯爵家が代々治める土地なのだから屋敷はきっと立派だろう。
お城かも知れないわね!
サンドラは素敵なお城にいる自分を夢見る。リッチ・ダモンネのドレスのことなど、もうすっかり忘れていた。
「では、いつ出発しますの?」
「2、3日うちには。私は寒いのは苦手でね」
「そんなに早く?なら男爵家に帰って準備してこないと」
あちらで伯爵夫人らしく振舞うには、流行のドレスや豪華なアクセサリーが必須だ。サンドラは頭のなかで持ち物リストを作り始めた。
「心配ないよサンドラ、それはもう使用人たちに指示してある」
それでは持って行きたいものが入っていない可能性がある。「でも」と抗議しかけたサンドラに、伯爵はたたみかけた。
「あなたは伯爵夫人なのだ、雑事はみな使用人にやらせればいいんだよ。そんなことよりも、今日は新しくできたレストランに行こう!」
「え、ええ、そうですわね」
なにやら性急な伯爵に少し不安を覚えたサンドラだったが、お出かけと聞けば頭はドレスや髪型のことでいっぱいになる。贅沢や楽しいことをすれば不安は解消できる、長年そうやって生きてきたのだ。




