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サンドラ、超特急で伯爵夫人になる

毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。

サンドラが王宮に行った翌日、イイデンナ伯爵は午前中から男爵家にやって来た。サンドラの謹慎が昨日で解けたと聞いて、さっそく会いに来たのである。


「やあサンドラ!ようやく会えるようになったね!」


伯爵はニコニコ顔でサンドラの頬に口づけ、持参した花束を差し出した。


「ハブリー、ありがとう!」


笑顔で受け取ったサンドラはそれをセバスに渡すと、「お茶にしましょう」と彼を庭の東屋に誘う。アデラが男爵になったので早く婿を迎えたかったし、自分たちの結婚のことも話し合わなければならない。


「ねえサンドラ、あなたはもう男爵位をアデラに譲ったのだろう?」


出されたお茶に口をつける間もなく、イイデンナ伯爵がきり出した。サンドラは驚きに目を見張る。昨日の今日で、まだ世間に発表されてはいないのだ。


「あら、よくご存じですわね?」


「あ、ああ、王宮内にちょっとツテがあってね。そこから聞いたんだ」


それを聞いてサンドラは顔を輝かせる。


「さすが私のハブリー、頼りになるわ!!」


やはり伯爵ともなると違うと、彼の顔の広さに感心する。当人はなぜか少し気まずそうにしているが。


「ですから、アデラの婿取りを急ぎたいんですの」


王家が認めたとはいえ、若い娘ひとりではやはり心配だ。アデラをしっかり支え、自分の言うことを聞く婿が欲しい。


「その件なら心配ない。あなたが謹慎中で話せなかったが、もう話はおおかた通っているからね」


なんと謹慎中にも自分のために動いてくれていたのだ。やっぱりハブリーはすごいと感心しつつ、サンドラはいきおい込んで聞いた。


「どこのご子息ですの?」


「ある伯爵家の次男でね、アデラ嬢と歳も近いし、気の良い男だよ」


「伯爵家の方ですの!それはどこの・・・」


「それよりサンドラ、私たちの結婚の話をしようじゃないか!」


家名を訪ねようとしたサンドラを、イイデンナ伯爵はさえぎった。


「あなたは隠居になったのだから、もう自由だろう?私は一日でも早くあなたと結婚したいんだ」


「まあ、ハブリーったら!」


サンドラはまんざらでもないように笑った。その手には、伯爵がくれたダイヤが輝いている。


「だからさ、これから結婚式を挙げるのはどうだい?」


この国の貴族は、教会で式を挙げたという証明書がないと届け出が受理されない。正式な結婚と認められないのだ。


「え??」


あまりに予想外の言葉に、サンドラは聞き間違いかと思い聞き返す。


「だから、今日これから結婚式を挙げよう!」


「や、やだハブリーったら、冗談ばっかり!」


「私は本気だ。近所の教会の司祭に聞いたら『今日OK』だって言われたから、今から行こう!」


冗談だと思ったサンドラだが、伯爵の真剣な表情に本気だと気づく。しかし「今日OK」なんて、そんな気軽に式を挙げるのはいかがなものか。


「でも私、結婚はアデラの後と思ってましたのに」


そして王都の大きな教会で、豪華な結婚式を挙げようと思っているのに。支度金は出なかったが、伯爵はお金持ちだから大丈夫と思っているのに。


「あなたが今も男爵ならそうだが、もう譲ったんだから待つ必要ないだろう?」


伯爵は立ち上がり、サンドラを促すようにその手を引いた。


「頼むよサンドラ!私はすぐに結婚したいんだ」


「だってハブリー、ウエディングドレスもないのに」


「そのままでかまわないさ、いつだってあなたは美しいのだから」


伯爵はサンドラを立たせると、情熱的に口づけをした。そしてサンドラをお姫さま抱っこで抱き上げる。


「あら、あら、あら!」


その男らしい強引さに、サンドラは戸惑いつつも喜びの声をあげた。こんなにも情熱的に求められるとは、若い娘に戻ったような気分だ。


そしてそのままウットリした気分で馬車に乗せられ、伯爵のご近所の教会でふたりだけの簡素な式を挙げ、結婚の届け出をした。


そう、サンドラはこの日、イイデンナ伯爵夫人になったのである。伯爵はそのままサンドラを王都の伯爵邸に連れ帰った。細かな問題はひとまず棚上げにし、今は愛される喜びに身を任せることにしたサンドラは、自分が奈落への一歩を踏み出したことをまだ知らない。


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