ディラン、サンドラに申し渡す
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「・・・と言うわけで、シンデレラ嬢はローレンス殿下の婚約者として、今日から王宮に住まうことになりました」
ローレンスとシンデレラが馬車で出発したあと、アスター男爵家に残ったディランはサンドラと対面していた。ふたりが婚約したことや、今後について説明するためだ。
「そ、そんな!アスター家の当主は私です!当主の許しもなく娘が勝手に婚約だなんて!」
「このことは国王陛下もお認めになっています。アスター男爵は陛下のご決定に不満があると?」
メガネをくいっとあげながら、ディランはサンドラを冷ややかな目で見やった。
王家に仕えるべき貴族が、国王に逆らうなどあってはならないことだ。もちろん、通常は当主の了承を得るし、このような性急なやり方はしない。だがシンデレラの安全を確保するために、今回はやむを得ないと陛下が判断したのだ。
「いえ、めっそうもない」
国王と聞いて、サンドラは慌てて首を横に振る。
「ではシンデレラ嬢の婚約を認めるということでよろしいですね?」
「は、はい」
よろしくはないが、認めるしかない。いきなりこんなことになって訳が分からないし、今どうにかする知恵や機転はサンドラにはない。
あとでハブリーに相談しないと!
彼ならうまい知恵を貸してくれるだろう。サンドラが心配しているのはシンデレラではなく、自分の身だ。王族がいる場で、継子に悪口を言われたら困る。
いいえ、王子妃になったら復讐する気かも!身分はく奪?修道院送り?まさか牢に入れる気じゃないわよね!?
サンドラは身震いした。ディランに「アスター男爵!」と呼ばれて、我に返る。
「あなたの処分ですが、今日からしばらくのあいだ自宅謹慎といたします。外出はもちろん、外部との手紙のやりとりも控えるように」
「なっ!?私はなにも悪いことはしてませんわ!」
サンドラは抗議する。謹慎なんて退屈だし、イイデンナ伯爵と連絡が取れなくなってしまうではないか。
「ローレンス殿下にウソをついたでしょう?バーサ嬢は病気ではなかったし、シンデレラ嬢もあなたが森に追いやったと聞きました」
「申し訳ありません。あれは、あのふたりは変わり者なので、殿下に失礼があってはいけないと思いまして」
その言い訳にディランは眉根を寄せる。
自分の娘を「変わり者」などと!
さきほど会ったバーサの姿が浮かぶ。あんな人形を大事そうに抱えて、きっと母親にほったらかしにされてきたのだろう。さっきは驚かされたが、そう思うと少しかわいそうな気がした。
「言い訳はけっこう!それに、これ以上殿下の婚約者を悪く言うと不敬罪になりますよ」
言われてサンドラはギリギリと歯噛みする。
「近いうちに王宮から呼び出しがあると思うので、それまでは自宅謹慎を守るように」
ディランがそう宣言して立ち上がると、サンドラは落ち着かない表情で尋ねた。
「なんのお話があるのでしょう?」
「決まってるでしょう?シンデレラ嬢やアスター男爵家の今後について相談するのですよ」
それならこれ以上の罰は受けないだろうと思って、サンドラはホッとする。退屈だが、それまで大人しくしているしかない。
「かしこまりました」
頭を下げてディランを見送る。
ひとりになると、ベルを鳴らしてセバスに茶を淹れるように命じた。シンデレラが王子妃になるとは、驚いたしちょっと悔しいが、それはそれでお得かもしれないと考える。
邪魔者が消えてアデラは男爵家を継げるし、自分は王子妃の母、ひいては未来の王の祖母となれるかもしれないのだ。権力を持てばお金も集まる。ハブリーも喜んでくれるだろう。
「王家からの支度金って、いくらくらい出るのかしら?」
単純で自分の都合の良いようにしか物事を考えられないサンドラは、早くも上機嫌で皮算用をはじめる。もはや王宮からの呼び出しが待ち遠しいくらいであった。




