の、呪ってやるぅうう-2
毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。
バーサは自室の衣裳部屋で震えていた。
サンドラの命令どおり、寝間着に着替えてベッドで大人しくしていたのだが、しばらくするとドアの外で声がしてきた。耳をすませてみると、ケイトと誰かが言い争っているようだ。
私を捕まえに来たんだわ!
舞踏会の夜の恐怖がよみがえってくる。バーサは添い寝していたベティをつかむと、震える足で衣裳部屋に駆け込んだ。ほかに隠れる場所が思いつかなかったのだ。
しかし、ドレスを処分したので隠れる場所は少ない。バーサは肩掛けを頭からかぶり、ハンガーにぶら下がる普段着の後ろに隠れた・・・つもりだが、実際には上半身くらいしか隠せていない。
なんでこんな目にあうの?
涙目でガタガタ震えながら、貴族なんてやっぱり嫌いだとバーサは思う。自分はシンデレラのために馬車を動かし、そのついでにちょっと舞踏会をのぞいただけなのに。
ギィイイイイイ!
誰かが衣裳部屋のドアを開けた音がする。バーサの心臓は早鐘を打った。もし捕まったら牢屋に入れられるのだろうか?牢屋はどんなところだろう?
「呪ってやるぅうう、呪ってやるぅううう!」
バーサは恐ろしさのあまり、我知らずつぶやきはじめた。身を守るにはそれしかないと思ったのだ。頭のなかでは、いろいろな呪いが浮かんでは消える。
うん?なんだろう、なにか言っているのか?
衣裳部屋もやはり薄暗かったが、ディランは目が慣れるとすぐにバーサを見つけた。寝間着の裾とスリッパをはいた足元が丸見えだったからだ。驚かさないようにそっと近づくが、令嬢が何やら言っているらしいのに気づく。
なんだって?
身をかがめて耳に手を当てたディランの耳に、今度ははっきりと聞こえた。
「呪ってやるぅううう!」
「ひっ!」
思わず小さな悲鳴をあげてしまう。すると頭からかぶった布がもぞもぞと動き、長く伸びた髪のすき間から、エメラルド色の目がこちらを見た。
「ひょ、ひょぇええええええええ!!」
ディランは腰が抜けてしまい、床に尻もちをついた。少しは気を張っていたせいなのか、気絶しなかったのは彼にしては上出来と言えよう。
あの時の幽霊!!
あの日の、忘れられないあの瞳。令嬢だと思ったソレは、どうやら幽霊だったらしい。床を這って逃げようとしたディランに、その幽霊は縋りついてくる。
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい、ごめんなさい!!」
幽霊は腰に縋りついて何故か必死に謝ってくる。その手にはあの人形。幽霊が動くたびに、その首もグリングリンと動く。
「いやぁああ!やめてぇえええ!!」
ディランが叫び声をあげたとき、ようやくケイトが駆けつけてきた。手にした灯りで空間を照らす。
「まあ、落ち着いてくださいませ」
「これが落ち着いていられるかぁあああ!」
ずり落ちかけたメガネを直しもせず、ディランは怒りの声をあげた。
「いえ、バーサお嬢さまに申し上げたのです」
「へ?」
侍女の言葉に、ディランは腰に縋りついているモノを見た。
「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
よくよく見れば幽霊でもなんでもない、髪がボサボサに伸びて不気味ではあるが、ただ謝り続けている小柄な令嬢であった。




