頼りたいと思える人
毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。
「ブライト伯爵家のアルバート殿か」
ほかの者をと考えていたが、彼なら申し分ないかもしれない。
確か大型犬のような印象の男だったなと、ローレンスは思う。アルバートのことはよく知らないが、悪い評判は聞いたことがない。なにより当主のブライト伯爵は堅物で知られているので、その子息なら大丈夫だろう。
「はい、アルバートさまがアデラお姉さまと結婚して家を継いでくだされば、私も安心です」
ふたりは森をそぞろ歩きながら話した。シンデレラの願いというのが「義姉の恋を叶えたい」と言うものだと知り、ローレンスはシンデレラのことがよりいっそう好きになる。
「うん、分かった。私にすべて任せるといい」
ローレンスはそう請け合った。
アスター男爵家の処遇については、いろいろ考えている。王家から打診された縁談であり、王子妃の生家になる家なら、ブライト伯爵も喜んで婿に出すだろう。サンドラを排除する計画も着々と進んでいるし、愛しい令嬢の「お願い」としては物足りないくらいだ。
「なにか、あなたのためにしてあげられることはないのか?」
「でしたら、ラリーさまがどこのどなたかなのを教えてくださいませ」
シンデレラは悪戯っぽく笑う。王宮とも関係があり、今のお願いもたやすく引き受けられるのなら、きっとこの人は高位の貴族に違いない。男爵令嬢の自分でいいのか不安だが、アデラと男爵家のためにも頑張るつもりだ。
「ああ、まだちゃんと名乗っていなかったな。私はローレンス・スットコ。このスットコランド王国の王子だ」
「!!!」
予想以上の答えに、シンデレラは息が止まる。冗談かとも思ったが、これまでの言動を考えると王子という地位が一番納得がいく。
「ローレンス殿下!?そんな、私のようなものをお妃になどと、おからかいにならないでくださいまし!」
ようやく呼吸を再開したシンデレラは、淑女の礼をとるのも忘れてそう叫んでいた。
「からかってなどいない、あなたと私は運命で結ばれているんだ」
ローレンスはシンデレラの両手をがっしりと握る。
「でも、私は男爵令嬢です!」
「爵位など関係ない。私は王子の私でなく、私自身を見てくれる人と結婚したいとずっと思っていた。それに国王陛下の許しはもういただいている」
シンデレラは青くなる。ならばこの結婚は決定したようなものだ。
同時に気づいた、アデラが自分を悪く言ったワケを。
「分かりました!アデラお姉さまは私を守るために悪口を言ったんです」
「どういうことだ?」
「私がそのぉ、ラリーさまを、その、す、好きだって、知ってるから、です」
今度はまた赤くなる。青くなったり赤くなったり忙しい。
「そ、そうか」
シンデレラの可愛い告白を聞いて、ローレンスもまた頬を染めた。
「ですが、どうして最初に教えてくださらなかったのですか?」
恥ずかしさをごまかすように、シンデレラは聞いた。初めから名乗っていれば、ややこしいことにならずに済んだだろう。「そーいうのは先に言えよ!」と、どこかのメガネ男子ならツッコむところだ。
「言ったろう?王子さまじゃなくて、私がただの騎士でも好きになってくれる人と結婚したいのだ」
ローレンスはシンデレラの両手を握りしめ、すみれ色の瞳をまっすぐに見つめて言った。
「これからあなたには、妃教育を受けてもらわなければならない」
王子は国王の提示した条件を話す。
「もちろん、私が全力で支える。私にはあなたしかいないんだ、お願いだシンデレラ!」
王子の心からの懇願に、シンデレラは力強くうなずいた。
「分かりましたわ」
自分が妃になるとは未だにちょっと信じられないけれど、ラリーことローレンスが何者であろうと、彼のことが好きだと思う気持ちは一緒だ。彼を支え、自分も支えてもらって、共に生きようと心に決めた。
支えたり奉仕したりするだけでなく、シンデレラには「頼りたい」と思える人ができたのだ。




