王子さまがやってきた-3
毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。
「失礼いたします」
ローレンスが回想にふけっていると、ふたりの女性が入室してきた。中年女性と令嬢で、どちらもスラリと背が高く、見事な銀髪だ。
「私は当主のサンドラ・アスターでございます。お待たせして申し訳ございません」
サンドラの言葉に、ディランは穏やかに答える。
「いや、こちらも突然おしかけて申し訳ない。私はローレンス殿下のお側に仕えるディラン・デキールだ」
ここでいったん言葉を切ると、隣に座るローレンスを紹介する。
「そしてこちらが、ローレンス殿下にあらせられる」
ええええ!?
思わぬ人物の来訪に、サンドラとアデラ、そして隅にひかえていたセバスまでもが驚愕の表情を浮かべた。
「そ、それは大変失礼いたしました。ローレンス殿下、このようなところにお越しいただき・・・」
慌てて淑女の礼をとるサンドラをローレンスは手で制した。
「今日は非公式の訪問だ、堅苦しいあいさつはいらぬ」
ローレンスはサンドラの華美な装いに不快感を覚えた。流行のドレスにギラギラとしたネックレス、大きなダイヤのはまった指輪、宝石が散りばめられた髪飾り、すべてが過剰で下品だ。
「先ほど言ったように、この家のご令嬢にお会いしたいのですが」
むっつりと押し黙ってしまった王子に代わってディランが続けた。
「はい、こちらにおりますのがアデラでございます」
母親に紹介されたアデラは淑女の礼をとる。その胸の内は驚きと不安でいっぱいだ。
ローレンス殿下がいらっしゃるなんて驚いたわ!でもバーサの件で殿下がわざわざいらっしゃるかしら?
不審者を探しに来るなら警備の責任者ではないのか?アデラは嫌な予感に震えた。
「こちらには3人の令嬢がいるはずでは?」
「いることはいますが、王宮の舞踏会に参りましたのはアデラだけでして」
「しかし」と、ディランはメガネをくいっとあげて問いただす。
「令嬢があと2人いるのは間違いないのでしょう?なぜ舞踏会に参加されなかったのですか?」
「下の娘たちは体の具合が悪かったんでございます」
予想どおりのディランの問いに、サンドラはとぼけてみせた。
「それでもいいので、そのふたりをここに呼んでください。これを見ていただきたいのです」
ディランは先ほどから手にしていた包みをほどき、おおわれた布を外してなかのものを見せた。
あれはシンデレラのガラスの靴!!
アデラは思わず叫びそうになって、慌てて手で口をおさえる。ラリーと別れるときに片方を落としてしまったと言っていたが、それがなぜローレンス殿下の手もとにあるのだろう?
「まあ、美しい靴ですこと!」
ガラスの靴のことを知らないサンドラは、無邪気に靴に見惚れている。
「我々はこの靴の持ち主を探しています。ですので、この家の令嬢の皆さんに直接ご確認いただきたいのです」
「デキールさま、この靴は我が家の娘のものではありませんし、あのふたりは舞踏会に行っていま・・・」
「それは本人に確認しますので、ここに呼んでください!」
ディランはサンドラの言葉をさえぎり、有無を言わさぬ勢いで命じた。隣のローレンスが、焦れて今にもキレそうになっていたからである。
「そ、それが、次女のバーサは昔から体が弱く、今日もベッドから起き上がれません」
ディランの勢いに気おされつつも、何がなんでも会わせるわけにはいかないと、サンドラは考えていたとおりの言い訳を口にする。
「そして末娘のシンデレラは出かけております」
「ほう、どちらへ?」
「それが分からないのです。お恥ずかしながら、あの娘はコケコケェエ、コッコッコ!」
「「は?」」
ディランとローレンスの声が重なる。




