王子さまがやってきた-2
毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。
ローレンス王子とディランは、応接間のソファに腰かけて当主の登場を待った。護衛の騎士たちも数名、壁際にひかえている。
「おそいな!」
20分くらい待たされているので、ローレンスはイライラしている。手に小さな包みを抱えたディランは、そんな王子をなだめた。
「まあ、我々もいきなり来ましたから、多少待たされるのは仕方ないでしょう」
婦人の支度には時間がかかるものだ。王子が来たとは言っていないし、これくらい待たされるのは許容範囲だろう。
「うむ、そうか」
ローレンスははやる気持ちを抑えた。
本当はもっと早く来たかったのだが、国王を説得したり、いろいろ根回ししたりの準備でこんなに日にちがたってしまった。
父上の許しもようやく出たことだし、シンデレラを早くこのような家から救い出さねば!
ローレンスは国王との会話を思い起こす。シンデレラが男爵家の令嬢と聞いて、国王は初めは彼の話を取り合わなかったのだ。
「高位貴族の家にも年頃の令嬢はおるだろう?」
「しかし陛下、シンデレラはヴェル伯爵家の血を受け継ぐ最後の生き残りなのです!」
「なんと!ヴェル伯爵家と言えば、聖女の生まれた家系ではないか」
ヴェル伯爵家が断絶してしまったいま、その血を受け継ぐ者の保護は国として重要だ。王子と結婚させるかどうかはともかく、国王はその娘に興味を持った。ローレンスは必死で説得を続ける。
「はい、彼女は聖女と同じすみれ色の瞳をもっており、その力も受け継いでいると思われます」
「まことか!?」
国王は驚いて身を乗り出した。
「陛下、アスター男爵家は小さな森を所有しておりますが、その森は異常なほどに緑が豊かで、動物もたくさん住んでおります」
ローレンスはあの森のことが気になり、密かに人をやって調査をさせていた。森は人の手が入っていないにもかかわらず、植物の種類が多くて成長も早く、木の実などの実りが他と比べて段違いに多いことが分かった。
「それがその令嬢の力だと?」
「私はそう考えております」
そうでなければ、あの森だけが豊かなことの説明がつかない。シンデレラが歌うと森の動物たちが集まってくるのは、森を豊かにしてくれるシンデレラを慕ってのことではないかとローレンスは考えていた。
「うーむ」
「陛下、私はどうしても彼女と結婚したいのです!!」
考え込む国王に、ローレンスは訴えた。
「彼女は今、継母とその連れ子にいじめを受けています。しかし彼女はその者たちを恨まず、かばってさえいる。本当に心の優しい娘なのです!」
「心の優しい娘、か」
つぶやく国王の顔が、ほんの一瞬父親のものに変わる。思えば可愛いひとり息子には、両親のケンカする姿しか見せてこなかった。少し考えたのち、王は条件付きで許可することに決めた。
「よかろう、シンデレラ嬢との婚約を認める。ただし妃教育を受け、ふさわしい能力を示せなければ婚約は解消することとする」
「ありがとうございます!」
ローレンスは勢いよく頭を下げた。賢いシンデレラなら、妃教育などなんなくこなすだろう。王妃との相性がちょっと心配ではあるが。
「おまえの母は私が説得しておく」
説得と言うか、またケンカになるに決まっているのだが、ここはひとつ息子のために一肌脱ごう。国王は癇癪を起こした妻の顔を思い浮かべ、やれやれとため息をついた。




