王子さまがやってきた-1
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アデラがシンデレラにすべてを打ち明けた日の翌日、珍しく早起きしたサンドラは、これまた珍しく机に向かっていた。手紙を書いているのである。
相手はサンドラの父親と古くから親交のある男で、一代で商売を成功させた商人だ。息子に代替わりしてからは隠居しているが、今もたいへん裕福に暮らしていると聞く。
あの男なら、シンデレラを嫁にやるのにちょうどいいわ。
そう、サンドラはシンデレラを嫁にやる話を持ちかけるため、手紙を書いているのだ。なぜその男かと問われれば答えはひとつ、「金持ちだから」。
貴族の若い娘をやるんだもの、たくさんもらわないとね!
その男から支度金をたんまり貰って、自分の懐に入れるつもりだ。もちろんイイデンナ伯爵との結婚の支度に使うのである。シンデレラはもとより、アデラやバーサのためにも使う気はない。
お金があるのだけがとりえの醜い男やもめだけど、あの娘にはピッタリよ。
サンドラはペンをとめてニマニマと意地悪く笑う。彼は貧しさから這いあがるようにして大商人になったのだが、品のない粗野な人柄で知られていた。
おまけに女好きで、若い頃は私もジロジロ見られて気持ち悪かったわ!
今度は身震いする。まるでドレスを脱がされているような、舐めるような男の視線を思い出したのだ。「でも」と、サンドラの口元はまた緩む。
シンデレラはいっぱい可愛がってもらえるわね。
クヒヒと品のない笑い声が口からもれた。最後にできるだけ早く会いたいむねを記し、サンドラは自分のサインをしたためる。
コンコンコン!
そのとき、部屋にノックの音が響いた。サンドラは手紙を急いで引き出しに隠すと、「お入り!」と返事をする。
「男爵さま、大変でございます!」
部屋に入ってくるなり、セバスが慌てたようすで告げた。
「王宮から使者がお見えになっています」
「王宮から?いったいどんな御用なんだい?」
男爵家に王宮の使者が来るなんてと、サンドラは怪訝な顔になる。
「それが、先日の舞踏会に来た令嬢をお探しだそうで、当家の令嬢に会いたいと」
「舞踏会だって?」
何ごとかと眉根を寄せたサンドラは、すぐあることに思い当たって青ざめる。
「まさか、バーサのことがバレたんじゃ!?」
彼女が庭を徘徊して騒がせていたのは、サンドラも目撃して知っていた。アスター男爵家の娘だとバレたら、当主のサンドラにもお咎めがあるにちがいない。
「ど、どういたしましょう、男爵さま?」
セバスも青い顔で慌てている。
「とにかく、バーサのことは隠し通すしかないよ。シンデレラも一緒にどこかに隠しなさい」
シンデレラも一緒にいたことだし、舞踏会に参加したのはアデラひとりだということで押し通すしかない。
「かしこまりました」
セバスは急いで部屋を出ていく。
「せっかく運が向いてきたところなのに、バーサはまったく!」
ひとりになったサンドラは、天井をあおいで忌々し気に叫んだ。男爵家にお咎めがあれば、イイデンナ伯爵との結婚もお流れになるだろう。
とにかく落ち着いて、なにがなんでもごまかさなきゃ。
サンドラは深呼吸してそう自分に言い聞かせる。そしてアデラと口裏を合わせるため、彼女の部屋に向かった。




