ハブリーったら本気なの?-2
毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。
ある夜のこと、アデラは自分の部屋で遅くまで縫い物をしていた。この前シンデレラのドレスをリメイクしたのが、案外面白くて性に合ってると感じたのだ。
あんな風に工夫すれば、お金をかけなくてもお洒落ができるわ。
そう考えて手を止める。自分が着飾るのは婚活のためだが、今はそれが宙ぶらりんになっていた。イイデンナ伯爵はもうあきらめたけど、新しい相手を探すのも気が進まないのだ。
「アルバート」
自然と口から彼の名がこぼれ落ちる。王宮でのあの一夜は、アデラの心に大きな変化をもたらしたのだ。
私はアルバートが好き。
たぶん、彼も同じように思ってくれているのだろう。でも、ふたりは結婚することができない。
夜にひとりになると、いろいろ考えて悩んでしまう。こんな時間まで針を動かしているのも、何かしていないと気持ちが落ち着かないせいだ。
だけどいい加減、ベッドに入らないとね。
そう思ってアデラが針箱を片付けていると、玄関あたりが何やら騒がしい。きっとサンドラが帰宅したのだろう。彼女は今日、イイデンナ伯爵と芝居を見に行っていたのである。
「アデラ!アデラー!」
サンドラが大きな声をあげてドアを叩いた。「酔っているのかしら?」とアデラは顔をしかめた。無視しようと思ったが、しつこいので仕方なくドアを開ける。
「アデラ!大変なニュースがあるのよ!」
サンドラが部屋になだれ込んでくる。顔は上気し、目はキラキラと輝いて、なにやら興奮しているようだ。
「お母さま、もう遅いですから明日に・・・」
追い返そうとするアデラを無視して、サンドラは言い聞かせるように言った。
「まあ聞きなさい!でもこの話は、今のところはおまえと私だけの秘密よ」
アデラは眉をひそめる。この人はまた、何か企んでいるのじゃないだろうか?警戒するアデラに、サンドラはそれどころじゃない爆弾を投下した。
「私、イイデンナ伯爵と結婚することにしたわ!!」
「!!!」
アデラはびっくりしすぎて声も出せない。
「本当よ、今夜彼にプロポーズされたの!」
「ほら!」と言って左手を見せる。その薬指には、大きなダイヤモンドの指輪がはまっている。
「この指輪、彼の家に代々伝わる家宝なんですって!!」
サンドラは得意満面だ。確かに、伯爵家の家宝と言っていいくらいの大粒のダイヤだ。イイデンナ伯爵は本気らしい。
「でっ、でっ、でも、お母さまがお嫁に行ったらアスター男爵家はどうなりますの?」
腐ってもサンドラは当主だ。嫁に行くわけにはいかないだろう。いや、もしかして、イイデンナ伯爵が婿入りする気なのだろうか?
そんなことを考えてアワアワしているアデラに、サンドラはさらなる衝撃発言をした。
「大丈夫よ、彼があなたに良いお婿さんを紹介してくれるって」
「ええっ!?そんな勝手に!」
「大丈夫、ハンサムで家柄の良い人だって、ハブリーは請け合ってくれたわ」
と言うことは、もう相手は決まってるのだろうか?アデラはあまりの展開の早さに唖然とする。サンドラに伯爵を紹介してから、まだひと月もたっていないのに。
「あなたがその人と結婚して男爵家を継げば、私はハブリーと結婚して伯爵夫人になれるのよ」
「お母さま!?そんなの絶対にイヤです!!」
アデラは母親の勝手な言い分にモーレツに腹を立てる。そんな流れで結婚させられるのも、男爵家を継がされるのもイヤだ。
しかし、アデラの気持ちなど無視して、サンドラは「これは決まったことなの!」と宣言する。
「いい?このことはまだ秘密よ」
最後にそう告げると、怒りのあまりうまく反論できないアデラを残し、サンドラは上機嫌に部屋を出て行った。




