ハブリーったら本気なの?-1
毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。
舞踏会から2週間たち、アスター男爵家には平穏な空気が流れていた。ひとつには、サンドラがシンデレラを罵らなくなったから。あれから何度か「コケッコー!」と鳴いていたが、さすがに疲れたらしい。
そしてもうひとつは、サンドラのご機嫌がすこぶる良いからだ。
「まあイヤだハブリーったら!おーっほほほほほ!」
庭のあずま屋から上機嫌のサンドラの声が聞こえる。イイデンナ伯爵とふたりでお茶を飲んでいるのだ。舞踏会の数日後から、彼は毎日のようにアスター男爵家に顔を出していた。サンドラに会いに。
「はぁあああああ~」
アデラは深いため息をつく。シンデレラと執務室で書類整理をしているのだが、サンドラの嬌声は窓を閉めていても部屋に入ってくるのだ。別にイイデンナ伯爵が好きなわけじゃないけど、母親に取られるのはなんともキツイ。
「アデラお義姉さま、そろそろお茶にしましょう」
シンデレラが気を使って声をかける。
「そうね、何か甘いものが食べたいわ」
ふたりは立ち上がってキッチンに向かう。来客のとき以外、自分のお茶は自分で用意するのだ。シンデレラがお茶を淹れ、ふたりはキッチンのテーブルについた。使用人が食事をするための質素なテーブルだが、ふたりには居心地が良かった。
「アデラお義姉さま、舞踏会ではアルバートさまと踊ってらしたわね」
しばらくの沈黙の後、ふいにシンデレラが言った。
「う!え!あ?そうだけど、何か!?」
突然の問いかけに驚き、つい語気が強くなるアデラ。
「いえ、とてもお似合いだなぁと思って」
「うっ!」
シンデレラに見られていたとは気づかなかった。自分はどんな顔をしていたのだろう?と思い、アデラは顔が赤らむのを感じた。
「前にも言ったけど、彼とは古い友達なの!ただの友達よ!!」
「そうですの?」
アデラの慌てようが微笑ましく、シンデレラは笑いながらティーカップを口元へ運んだ。
「そ、そういうあなたは、舞踏会で素敵な方に会わなかったの!?」
そう言えば、バーサがやらかし過ぎて、シンデレラには舞踏会でのことをあまり聞いていなかった。
「会いましたわ。素敵な騎士さまに」
「えええ!それはどこのどなたよ!?」
アデラはさらに驚く。シンデレラに想い人がいたとは初耳である。
「ラリーさまというお名前しか分かりませんわ」
「やだ、ちゃんと家名とか聞いてないの?どんな人??」
アデラはテーブルから身を乗り出すようにして聞く。ものに動じない義妹の恋バナなんて、興味津々である。
「うーん、背が高くて、瞳が青空のように綺麗な方。とてもお優しいんですよ」
「それだけじゃあ、どこの誰か分からないじゃない」
アデラはやきもきする。
「でもお義姉さま、その方とはきっとまた会えますわ」
自分は彼を知らないけど、向こうは自分のことを知っているのだ。あの晩見た夢はきっと正夢になる。彼女そう信じていた。




