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ギギギィイイっとな-2

毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。

「ディラン、どこか体の具合が悪いのではないか?ちゃんと医師に見てもらったほうがいいぞ?」


サンドラが男爵家の居間でコケコケ言っていたころ、王宮の執務室ではローレンス王子が側近のディランを気遣っていた。昨夜の舞踏会でディランがまた気絶したと聞いて、心配になったのである。


「いえ、殿下。私はどこも悪くありませんので、ご心配いただく必要はありません」


それはウソではない。この間はローレンスが「舞踏会を中止する」と言い出したショックで倒れたのだし、昨夜はまた別の精神的ダメージが原因だ。体はどこも悪くない。体は。


昨日の舞踏会で不審者を発見したあと、ディランは王子のもとへ駆けつけようとした。不審者が木から降りて逃げたようなので、まずは一階に降りて周囲を警戒し、外階段からバルコニーへあがろうと思ったのだ。


だが、バルコニーに近いフランス窓から外に出たとき、自分から少し離れた建物の影に、こちらに背を向けた何者かが立っているのに気づいてしまったのである。


御者、なのか?


しかし御者がこのような場所に入ってくるハズがない。よく見れば、なぜか全身泥だらけでズボンの裾を地面に引きずっている。そして、ディランはそいつが手に持っているものに気づいて、全身の毛が逆立つのを覚えた。


ハアハアと肩で荒い息をしながらたたずむ御者は、古ぼけた女の子の人形をぶら下げるように持っているのだ。手の先でゆらゆらと揺れるソレから目を離せないでいると、人形の首がギギギィイイっと動いて、泥だらけの顔をこちらに向けてきた。人形と目が合う。


に、人形が動いた!?もしかしてアレは幽霊なのか?いや、そんなものがいるわけない・・・よな?


ディランはガクガクと震える自分の膝を叱咤しながら、確かめてやろうと相手に近づいた。あと数歩のところまで来たとき、そいつが急に振り向く。顔の半分をおおう前髪のすき間から、人形と同じエメラルドの瞳がこちらを見ていた。


「「いやぁあああああああ!」」


自分と相手の悲鳴が見事にシンクロするのを聞きながら、ディランは意識を手放した。


しばらくしたあと、発見した衛兵によってゆり起こされたのだが、まさか幽霊を見て気絶したとは言えない。不審者に驚いたと言うのも男として情けないし、ディランは仕方なく貧血を起こしたと言い訳したのだ。


「おい、ディラン?」


ローレンスに呼ばれて、ディランは昨夜の回想から意識を今に戻した。


「やっぱり医師に診てもらったらどうだ?私の侍医を派遣しよう」


心優しい王子が心配そうにこちらを見ている。ディランはちょっと後ろめたい気持ちになった。


「殿下、お心遣いに感謝いたします。でも私は本当に大丈夫ですから」


「そうか?」とまだ心配しているローレンスに、ディランは背筋を伸ばして言った。


「それよりも殿下、シンデレラ嬢についての今後の方針を決めましょう」


ディランは昨夜の幽霊?について考えるのはひとまず封印し、問題を片づけることに集中しようと決めた。


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