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いやぁあああああああ!-2

毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。

シンデレラとローレンスをようやく引き合わせることができたディランは、会場の片隅でひとり窓の外を眺めていた。今夜は見事な満月だが、今の彼は風流を楽しむ余裕がない。ローレンスがやらかしてないか、ちゃんとシンデレラ嬢の心をつかめたのか、心配で仕方なかったのである。


「はぁ」と、何度目かの小さなため息をついたとき、彼は気がついた。窓の向こう、少し離れたところにある木の枝が、なにやら不自然に動いているではないか。


まさか、不審者か・・・?


ディランはメガネの位置をなおして目を凝らすが、暗いのでよく分からない。彼は手招きで近くの衛兵を呼び寄せ、目線で木を示した。


「なんかおかしくないか?調べてきてくれ」


彼は目立たぬよう衛兵に指示を出す。こんなとき、大声を出して騒ぐのは悪手である。大勢の人がいるので、なんでもないことでもパニックになりかねない。王宮の衛兵たちもその辺りは心得ているので、数人が静かに庭へ向かう。


なのでディランと衛兵の動きに気づいたのは、近くにいた数人と木の上のバーサだけである。


やばい!見られちゃった!!


バーサはあわてて木を滑り降りる。目深にかぶった御者の帽子が落ちるが、拾っている暇はない。馬車に向かっていちもくさんに走るバーサ。だが、ふいに足がもたつき、彼女は植え込みのなかに倒れこんだ。どうやら折ってごまかしていた裾がほどけ、その長い裾に足がもつれたようだ。


「あいたたたた!」


バーサは顔から土につっこみ、地面に転がったベティとともに泥だらけになった。しかし、悠長にしている暇はない。幸い大きなケガはなかったので、起き上がって片手で相棒を拾うとまた走り出す。


やばい!やばいよぉおお!!


もし衛兵に捕まりでもしたら大変だ。王宮の木に登ってのぞき見していたなんて、自分が投獄されるだけでなく、男爵家にだってお咎めがあるに違いない。


しかし闇雲に走ったので、どちらの方向に馬車があるのか分からなくなってしまった。王宮の建物から離れたつもりが、いつの間にかまた近づいてしまったようだ。


馬車置き場はどっちだろう?


はあはあと荒い息をつきながら、バーサは建物の影に隠れて周囲を確かめる。片手の先では、泥まみれでボロボロになったベティがブラブラと揺れていた。


「!!!」


ふいに背後に人の気配を感じて、バーサはクルリと振り返った。正面に男が立っている。


「「いやぁあああああああ!」」


バーサだけでなく、なぜか相手も大きな叫び声をあげる。もうおしまいだと観念したバーサだが、メガネをかけた目の前の青年は、「うーん」とひと声唸ると丸太のように倒れた。


******


バルコニーにいるシンデレラとローレンスの耳に届いたのが、その叫び声である。


「何があったんだ!?」


ローレンスが立ち上がって夜の庭に目を凝らす。するとバルコニーの下あたりの植え込みから、小さな人影が飛び出してきた。


あっ!あれはバーサお義姉さま!


並んでそれを見ていたシンデレラは、その人影がバーサだとすぐに気づく。なにやら走り方がおかしいが、服装は今日着てきた御者のものだし、手にはベティらしき人形をぶら下げている。世の中に御者はたくさんいるけれど、人形を連れているのはバーサひとりだろう。


「危険だからなかに入ろう」


不審者かもしれない。そう思ったローレンスはシンデレラを室内に誘導しようとしたが、彼女は首を横に振る。


「いいえ、私はもう帰りますわ!」


「え??」


この状況で唐突に別れを告げられたローレンスは驚く。シンデレラはそんな彼にかまわず、庭へと続く階段を駆けおりた。バーサに何かあったのではと、心配でならなかったのだ。


「待て!待ってくれ!!」


走り出すシンデレラを追いかけようとしたローレンスは、ちょうど不審者の報告に来た衛兵に止められた。


「殿下、危険ですのでおやめください」


「かまわん、離せ!」


「なりません!」


そんなやり取りをしているあいだに、シンデレラの姿は闇のなかに消えてしまった。たったひとつ、ガラスの靴の片方だけを階段に残して。

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