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いやぁあああああああ!-1

毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。

「ねえハブリー、私ちょっと酔ってしまいましたわ」


3回目のダンスのあと、イイデンナ伯爵とワインで喉を潤していたサンドラは、頬をうっすらと染めて彼の胸にグイと身を寄せた。伯爵はそんなサンドラの肩に手をまわし、耳元でささやく。


「では、庭に出て少し涼みますかな」


こういった舞踏会のとき、庭は恋人たちがむつみあう絶好の場と化している。木陰や暗闇でガサゴソやっているのを騒ぎ立てる者はいないし、ケンカ沙汰でも起きないかぎり見張りの衛兵も見逃しているのだ。


イイデンナ伯爵はそっと周囲を見回し、アデラがまだ友人の青年と一緒にいるのを確認する。若い者は若い者どうしが楽しいだろう。ならこちらも楽しく過ごそうと決め、ワイングラスを置いてサンドラとともに庭へ向かう。


サンドラと出会えたのは収穫だったな。


伯爵は歩きながらそう思った。彼女は自分好みの美しい銀髪だし、何より話が合っておもしろい。好みや価値観が似ているのである。未亡人だから、若い娘と違って気楽に付き合えるのもいい。


「ああ、夜風が気持ち良いですわね」


庭に出ると、サンドラがおくれ毛に手をあてながらそんなことを言った。


「そして月明かりに照らされたあなたは女神のようだ」


指輪のたくさんはまった手をとって口づけると、サンドラはクスクスと笑う。伯爵の手も宝石のついた指輪だらけなので、ふたりでキランキランである。


「お上手ね、ハブリー!」


イチャイチャしながらしばらく歩いたふたりは、やがて手ごろな暗がりを見つけてそこへ飛び込んだ。


同じころ、バーサもベティを連れて庭を徘徊していた。誰もいないと思った庭だが、あちらこちらの暗がりからクスクス笑いや小さな悲鳴などが聞こえてくるのだ。


これは恋愛小説で読んだヤツ・・・。


長い前髪の下でバーサは顔を紅潮させた。その本では、ある令嬢が素敵な青年と舞踏会で出会い、庭でコッソリあんなことやそんなことを経験するのである。そんな破廉恥なことは物語のなかだけだと思っていたのだが、現実を目の当たりにしてバーサは大いに戸惑っていた。


どうしよう、戻ったほうがいいかな。


こんなに人が多いと姿を見られるかもしれない。御者姿の自分がウロウロしていたら目立つに違いない。だが、庭にいるカップルはそれぞれ自分の相手に夢中なようだ。バーサは覚悟を決め、植え込みに隠れるようにしながら王宮の建物に近づいて行った。


うーん、困ったな。


なんとか建物の下までたどり着いたバーサは、上を見上げて眉根を寄せた。そばまでくれば庭からコッソリのぞけると思っていたが、どうやら会場は2階らしい。上から賑やかな音楽や人々の笑い声が聞こえてくる。


あきらめようかとも思ったが、バーサはどうしても会場を見てみたくなった。最初はシンデレラが心配で、少しでも様子が分かるかもしれないと思って来たのだが、ここまでたどり着いたら「王宮の舞踏会」そのものへの好奇心が抑えられなくなってしまったのだ。


こうなったらもう、アレしかないわね。


バーサは手ごろな木を見つけると、ベティを口にくわえてよいしょとばかりに幹に飛びついた。小さなころはお転婆な一面もあって、大人に叱られるのもかまわずに庭の木によく登っていたのである。だからこのくらいの木に登るのなんて、お茶の子さいさいだ。


バーサはスルスルと木を登ると、2階の窓がのぞける位置の枝にまたがった。


うわあ、綺麗・・・!


窓の向こうに広がる光景に、バーサは文字通り息を飲んだ。舞踏会の会場は想像以上に明るくきらびやかで、着飾った令嬢や紳士が優雅に会話したり踊ったりしている。まるで幼い頃に読んだ絵本の世界のようだ。その光景にウットリとする一方で、バーサは思った。


ここは私が居て良い場所じゃない。


貴族というのは自分とはまったく違う人種で、その生活に馴染むことは絶対できないと、バーサはあらためて気づいたのである。

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