月と星々が見守るなかで-2
毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。
「うん、そう、上手じゃないか」
シンデレラをリードしながら、ローレンスは励ますように声をかける。
「騎士さまのリードのおかげです」
彼のリードが上手なのは本当で、シンデレラは踊るのがだんだんと楽しくなってきた。頭上に輝く満月をのぞけば、この場にはふたりしかいない。顔をあげると、王子さまと見まごうような素敵な騎士と目があう。まるでおとぎ話のようだと、シンデレラは夢見心地で音楽に身をゆだねた。
「私のことは・・・そうだな、ラリーと呼んでくれ」
騎士さまと呼ばれたローレンスは、とりあえず愛称を教えた。いきなり王子だと名乗ったら、きっと彼女を驚かせてしまうだろうと思ったからだ。
「では、ラリーさま?なぜ私のようなものに親切にしてくださったのですか?」
シンデレラは愛称か偽名か分からないその名を呼んだ。家名を名乗らないのはやはり高貴な身分だからかもしれないが、ならばいっそう自分にしてくれた親切の理由が分からない。
「森で会ったあなたのことが気になっていてね。申し訳ないが、あなたのことを少し調べさせてもらったんだよ。ドレスも何もないと聞いて、もしかして舞踏会に来られないんじゃないかと思ったんだ」
「まあ!」
シンデレラはうつむいて顔を赤らめた。業者相手に自ら値切っていることだけでなく、ドレスやアクセサリーを売ったことまでバレているとは。さすがのシンデレラも恥ずかしくて顔をあげられない。
「お恥ずかしいですわ」
「あなたが恥ずかしがることではない。恥ずべきは、あなたをいじめている義母や義姉だろう」
ローレンスが憤りをこめて言う。
「え!?」
驚いたシンデレラが盛大に足をもつれさせたのを、ローレンスがサッと支えた。シンデレラは王子に抱えられたままの姿勢で、首を振って否定する。
「わ、私、いじめられてなんかいませんわ!」
アデラたちとは仲良しだし、サンドラの行動には悩まされることはあっても、シンデレラはあれがいじめとは思っていない。
「しかし、あなたはドレスやアクセサリーを取り上げられて、売られてしまったのだろう?」
「いいえ、そんなことはありません!」
あれは自分で売ったのである。シンデレラは再びきっぱりと否定するが、ローレンスは信じない。ゆるゆると首を横に振って、話を続けた。
「使用人代わりに男爵にこき使われていると聞いた」
「それも違います!!」
使用人の仕事だって自分から率先してやっているのだ。経済的な理由が大きいのは確かだが、家事を楽しんでもいた。
「ああ、あなたはなんて優しいんだ!」
間違いだと必死に訴えるシンデレラの姿に、ローレンスは感動する。彼女は家族からの苛烈ないじめに耐えているだけでなく、かばってさえいるのだ。
本当に聖女のようではないか!
辛い状況にひとりで耐える精神力と、自分を迫害する人間さえ許す懐の深さ。美しく可憐なだけでない。自分が見初めた令嬢は、将来の王妃にふさわしい気高さと優しさをもっているのだ。自分の目に狂いはなかったと、ローレンスは熱くうるんだ瞳で彼女をみつめた。
よし!今ここで、彼女にプロポーズしよう!
シンデレラこそ妃になるべき女性だ。そう確信したローレンスは、シンデレラの手をとり跪く。もしディランがこの場にいたら、スライディングしてでもふたりの間に割り込んでいただろう。
「あなたを害する家族から必ず救い出してみせる!だからシンデレラ・・・・」
「えっ!ラリーさま!?」
いきなり跪いたローレンスをシンデレラはあわてて立たせようとした。先ほどから話がかみ合っていないというか、どうも自分の言葉がちゃんと伝わっていないような気がする。
「私は・・・」
シンデレラがきちんと説明しようとしたそのとき、美しい夜を引き裂くような悲鳴が聞こえてきた。
「「いやぁあああああああ!」」




