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月と星々が見守るなかで-1

毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。

シンデレラはバルコニーの椅子でひとりになると、ようやく息をついた。室内からは楽団の演奏する音楽や喧騒が聞こえてくるが、間にガラスの扉が一枚あるだけで、ずいぶんと気持ちが落ち着く。バルコニーは風が心地よく、見上げれば満天の星が輝いていた。


あの方は、いったい・・・。


どうして私にドレスや高価な宝石を贈ってくれたのか、さっぱり分からない。いや、自分は届けただけで本当の送り主は他にいると言っていたが、どういうことだろう?


夜風にあたりながらそんなことを考えていると、扉が静かに開く音がした。シンデレラがそちらに顔を向けると、金髪で背が高く、真っ白な盛装に身を包んだ青年が近づいてくる。


「やあ、シンデレラ嬢。また会えたね」


青年はシンデレラに向かって微笑んだ。見覚えのあるその優しい笑顔に、シンデレラは椅子から飛び上がりそうなほどに驚く。まさか、この人が自分にドレスやアクセサリーを贈ってくれたのだろうか?でも、あのとき自分は名乗ってもいないはずだ。一度会っただけの自分にそんなことをする理由も思い浮かばない。


「あなたは、森で会った騎士さまですよね?」


シンデレラにそう尋ねられたローレンスは、嬉しそうにうなずく。


「覚えていてくれたんだね」


森で出会ったこの令嬢は、初めの印象通り美しく、儚げで守ってあげたくなる容姿をしていた。上品に着飾った今夜はいっそう綺麗だ。


ローレンスは身をかがめてシンデレラの手をとり、両手で優しく包み込むように握る。大きな手のひらから相手の熱が伝わってきて、シンデレラは恥ずかしさで顔を赤らめた。心臓がバクバクして、顔がどんどん熱くなっていく。


「あ、あの、あなたがドレスやアクセサリーを贈ってくださったのですか?」


「ああ。瞳と同じすみれ色のドレスを着たあなたを見たかったんだ。でも、そのドレスも素敵だね」


ローレンスの声には責めるような響きはなかったが、気落ちした様子ではあった。そのすみれ色のドレスがぼろきれの残骸になってしまったことを思いだし、シンデレラは焦る。謝らなければならないだろうが、このタイミングでは気まず過ぎて言い出せない。


「いいえ、違うんです!こ、これは父が亡くなる直前に贈ってくれたもので、今夜はどうしてもこのドレスが着たかったんです」


それはウソじゃない。父だけでなく、セバス夫婦や義姉たちの思いがこもった大事なドレスなのだ。


「すまない、責めてるわけじゃないんだよ」


ローレンスは安心させるように優しく言った。残念ではあるが、彼女の父親のことはディランに聞いていたし、形見の品なら大事に思うのは当然だろう。それに、ドレスでも宝石でも、妃になればいくらでも贈ってやれるのだ。


私の妃にしたら、うんと着飾らせて贅沢させよう!そう、誰よりも美しく・・・。


ローレンスは着飾ったシンデレラを想像する。口元がにへら~と緩みそうになるが、かろうじてこらえた。運命の女性に再会できたのだ。今夜はなにがなんでもカッコよく決めなくてはならない。


「どんなドレスであろうと、あなたが誰よりも美しいのには変わりない。シンデレラ嬢、私と踊ってくれないか?」


誘われてシンデレラは尻込みした。身につけているものや立ち居振る舞いを見ても、相手はかなり身分が高いようだ。先ほど令嬢に取り合いをされる王子さまを見なかったら、きっとこの人がローレンス殿下だと思ってしまっただろう。男爵家の令嬢にすぎない自分には分不相応な相手に思えた。


「でも私、こういう場所に慣れていないので、うまく踊れませんわ」


「ならここで、私たちふたりだけで踊ろう」


「えっ!?あの・・・!」


ローレンスはシンデレラの手を引いて、椅子から立ち上がらせる。そのままバルコニーの広い場所まで誘導すると、向き合ってシンデレラの腰に手を回した。こうなると彼女も覚悟を決めるしかない。ローレンスの腕に自分の手を添えると、ガラス戸越しに流れてくる音楽に合わせてステップを踏み出した。



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