あの人は誰?
毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。
ふう、ようやくシンデレラ嬢を確保したぞ。
バルコニーを出たディランは、ホッとため息をついた。アスター男爵家の馬車がついたら知らせがくるように、あらかじめ手配しておいたのだ。到着が遅かったので心配したが、無事に来てくれて良かった。
しかし殿下が贈ったドレスじゃないのは想定外だな。
あちらにはあちらの事情があるのだろうけど、ローレンス王子がヘソを曲げないといいが。そんなことを考えながら報告のために会場を歩いていくと、ダンスの輪のなかでひと際目立つカップルを見つけた。休憩をはさんで3ラウンド目に入った、イイデンナ伯爵とサンドラである。
おや、あれはイイデンナ伯爵ではないか。相手の婦人は誰だろう?
娘のいないイイデンナ伯爵には招待状を送っていないのに、どうしてこの場にいるのか不思議だ。それに、あの伯爵についてはディランはある情報を耳にしていた。周囲を見回したディランは、顔見知りの令嬢が数人で話しているのを見つけ、近づいて声をかける。
「ごきげんよう、モブノ子爵令嬢」
「デキールさま、ごきげんよう」
今夜のために着飾ってきたらしい令嬢は、愛想良く笑みを浮かべて返事をよこす。ディランは令嬢のドレスをひとしきり褒めたあと、イイデンナ伯爵のほうをチラリと見て尋ねた。
「イイデンナ伯爵のダンスパートナーがどなたかご存じですか?」
「ああ、あれはアスター男爵ですわ」
「えっ!?」
ディランは驚き、その女性をじっくりと観察する。銀髪を高く結い上げたアスター男爵は、胸や背中を大胆に露出した派手なドレスを着ていた。中年の婦人が着るには若すぎるデザインだし、アクセサリーも派手だ。今夜の舞踏会の趣旨を考えるといささか場違いでもある。
「お若いですわよねぇ?もしかしてローレンス殿下のお妃に立候補するおつもりかしら」
ディランの胸の内を読んだかのように、令嬢は口元を扇で隠しながら嫌味を放った。報告どおりの男爵の様子に、ディランはますます継子虐待の確信を深める。
しかし、あのイイデンナ伯爵と一緒とは!類は友を呼ぶとはこのことか。
ディランはちょっと面白いことになってきたなと思いつつ、ローレンス王子に報告すべく令嬢に別れを告げた。




