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Shall We Dance?-1

毎日3回、7:00、11:00、16:00に更新します。アルファポリスさま、カクヨムさまにも投稿中。アルファポリスさまでは、数話分先行して更新しています。

うわあ!さすが王宮の舞踏会ね、みんな気合が入ってるわ。


舞踏会の会場に足を踏み入れたアデラは、壮麗で華やかな雰囲気に一瞬でのまれてしまっていた。何よりも人が多く、皆がみんなこれでもかと着飾っていて目が痛いくらいだ。アデラは今、宝石のなかに紛れた石ころのような気がしていた。エスコートしてくれたイイデンナ伯爵と一曲踊ったあとは、完全に壁の花になっている。


しかも、そのイイデンナ伯爵は、母親のサンドラとホールのど真ん中で堂々とダンスをしているのだ。


今日は妃選びの舞踏会で主役は若い娘のはずなのに、ふたりには関係ないらしい。服装も挙動も派手なので、なかなかに目立つ。今夜のアデラの最大のミッションは、母親とシンデレラが出会ってしまうのを避けることだったが、この様子ではあまり心配しなくても良さそうではある。


そろそろシンデレラも着くころかしら?


ぼんやりとそんなことを考えていると、聞きなれた声が自分の名を呼んだ。


「アデラ!やっと見つけた」


振り向けば、やはりアルバートだった。どうやら自分を探していてくれていたようだ。


「あらアルバートも来ていたのね」


「ああ、妹の付き添いだよ。あいつ婚約者がいるくせに、一度でいいから殿下とダンスしてみたいって言うからさ」


参加者がこんなにも多いのは、そういう人間が少なからずいるからかもしれない。アデラは口元を隠すように扇を広げ、隣に立ったアルバートに小声でたずねた。


「ねえ、シンデレラを見た?そろそろ来るはずなんだけど」


「いや、この人ごみじゃあ知り合いでも見つけるのは難しいし、先に気づければ鉢合わせは避けられそうだけどね」


彼には詳しいことは話してないが、アデラの魂胆などお見通しなのだろう。いたずらっぽい笑顔を浮かべて付け加える。


「君のお母さまの相手はイイデンナ伯爵がしているみたいだし」


「はぁ~」と、ため息で返したアデラに、アルバートは手を差し出した。


「せっかくだから僕らも踊ろうよ」


そんな気分になれないアデラは、一瞬断ろうと思った。


しかし王宮で踊る機会なんて少なくとも独身のうちはもうないだろう。どこに嫁入りするにしろ、アルバートとの思い出にここで一曲踊るのはいいかもしれない。


「いいわよ」


アデラはうなずいて彼の手を取ると、ダンスの輪に向かって歩き出した。


曲が終わったタイミングで、ふたりは自然に輪に入る。ふたりで向き合うと、新たな演奏にあわせて踊りだした。アデラは正確にステップを踏み、楽しそうに軽やかに舞う。アルバートもアデラとのダンスを心から楽しんだ。アデラとなら変に気を使うこともないし、息もぴったりあって楽しく踊ることができるのだ。


いや、ダンスだけじゃない。話をするのだって、遊びに行くのだって、俺はアデラと一緒のときが一番楽しいんだ。


自分が正体を隠して街で遊んでいたころ、まだ平民だったアデラと街で出会った。不良少年に絡まれていたのをアルバートが助け、それからは時々一緒に遊んでいたのに、いつの間にか見かけなくなってしまったのだ。しばらくして男爵令嬢として再会したときはかなり驚いたが、これで彼女と対等に付き合えると思って嬉しくもあった。


「今日のキミは特別に綺麗だな」


アルバートは腕のなかのアデラに微笑みかけた。アデラの頬はみるみるうちに赤らみ、拗ねたようにそっぽを向く。


「べ、べつに、ドレスも新調してないし、いつも通りよ」


アルバートは赤く染まったアデラの耳に口元を近づけた。「それでも誰よりも綺麗だ」そう囁きかけようとして、思いとどまる。


だが、必要以上に強く彼女を抱き寄せてしまったらしく、驚いたアデラがハッと顔をあげた。こちらを見つめてくる、美しいブルーの瞳に彼は見惚れる。


アデラを失いたくない。


財産目当てで年寄りの後妻になるなんて、やめて欲しかった。しかし、思いを打ち明けたところで自分の立場ではどうにもならないのだ。アルバートは情けなさに目を伏せる。


自分が伯爵家の後継ぎなら、父親を説得してアデラを妻に迎えられたかもしれない。だが自分は次男で、父はどこかの貴族の家に婿に入ることを望んでいる。でもアデラには男爵家を継ぐ気はないらしいし、アルバートの家にも男爵家を援助できるほどの余裕はないのだ。


「アルバート?」


いつもと違う様子に、アデラが怪訝そうな声で名を呼ぶ。


「なんでもないよ、アデラ」


アルバートは顔をあげ、いつもの明るい笑顔で答えた。

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